感染と消毒 2019 Vol.26 No.1 p.10-15
総説
日本のHIVの現状について
立川(川名) 愛
1990年代まではHIV/AIDSは人類の脅威となる致死的感染症であったが,抗HIV薬が次々と開発されHIVに対する治療が飛躍的に進歩した結果,制御可能な慢性感染症へとその姿を変えてきた.抗HIV治療は感染者自身の予後改善のみでなく,新たな感染リスクを大幅に減らすことができるため,現在では「予防としての治療」と位置付けられ,全世界で抗HIV薬によるAIDS流行終結を目指した予防対策が進められている.その一方で,現行の抗HIV治療では未だに治癒は不可能であり,HIV感染者は生涯抗HIV治療を継続しなければならないため,治癒を目指した新たな治療戦略の開発が待たれている.