感染と消毒 2019 Vol.26 No.2 p.50-54
感染制御に現場から一言
TDM どの薬剤まで?
小阪 直史
近年,治療的薬物モニタリング(TDM)を用いた薬物動態学的アプローチとして,これまでTDMの対象とされていない薬剤である,βラクタム系抗菌薬,リネゾリド,ダプトマイシン等の有用性が検討されている.この新たなTDMでは,従来の用法用量では治療濃度域への到達・維持が難しい複雑な薬物動態を呈する患者への投与量を最適化することや,特殊患者集団における薬物固有の副作用を最小化することを目的としている.このTDMに基づく介入では,薬物動態/薬力学(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics;PK/PD)理論における目標値への達成率は向上するものの,臨床的転機の改善を示した研究は限られている.今後,新たな抗菌薬のTDMを臨床現場で普及させるためには,対象患者の選択,検体採取のタイミングや目標濃度値の標準化,投与設計アプリの普及,測定機器の整備や精度管理による測定結果の保証に加え,測定や解析に係る費用の診療報酬化が鍵となるだろう.