感染と消毒 2021 Vol.28 No.1 p.3-9
総説
SARS-CoV-2 のワクチン開発と諸課題
田村 大輔
世界中のワクチンメーカーは,新型コロナウイルスワクチン開発において,市場の優位性を獲得するため開発競争を行っている.2021年3月,世界中で260種類のワクチンが研究開発されている.8種類(ワクチンメーカーは7つ)は,世界中のいずれかの国や地域で緊急使用承認を受け,接種が行われている.Pfizer/BioNTech,Modernaが実用化したワクチンは,世界初のメッセンジャーRNAワクチンであり,その有効性は非常に高いが,輸送や温度管理にかなりの制限が必要である.AstraZeneca/Oxfordのウイルスベクターワクチンは,メッセンジャーRNAワクチンの有効性にはやや劣るもののワクチンの取扱は簡便である.接種後の有害事象としては,接種部位の痛み,全身倦怠感,頭痛が,比較的多く報告されている.国産ワクチンは,数種類が開発中であるが実用化までの道のりは長い.ワクチン接種実施要項は,地方自治体による接種体制の構築が急務であるが,ワクチン輸送,接種方法,医療機関の協力体制,そして,何より国民への周知など,実施には多くの課題がある.