中心静脈栄養(TPN)や抗がん剤の無菌調製の環境として、無菌室、クリーンベンチ、安全キャビネット等があります。
TPNをクリーンベンチで調製する場合、クリーンベンチの適正管理と清潔操作を適切におこない、シューカバーは必要ありません。クリーンベンチの定期的な点検、作業時のクリーンベンチのフードの開放幅、ベンチ内の作業位置などが重要です。また、クリーンベンチを使用せず無菌室内で調整する場合も、適切に管理された空調下では、履物の種類は関係なく清浄度には影響しないため、シューカバーの使用は不要です1,2)。
次に、抗がん剤調製について、こちらもクリーンベンチの想定でしょうか。曝露防止の観点から、クリーンベンチは抗がん剤の調製には不適切であり、安全キャビネットの使用が推奨されます3,4)。クリーンベンチが装置内を陽圧にし、内部の空気が調製者へ向かって出てくるのに対し、安全キャビネットは、内部の汚染した空気やエアロゾルが外に流れ出ないような仕組みになっています。給気は、HEPAフィルターを通した清浄空気でありキャビネット内を無菌状態にし、かつ内部の空気はHEPAフィルターを通して排気し、外部環境の汚染は最小限となるよう設計され、無菌性と調製者の安全性が担保されています。
抗がん剤調製時のPPE着用目的のひとつに、調整者の曝露防止があります。安全キャビネット内での調製を前提とした場合、安全キャビネットの点検、作動確認、作業位置とフードの開放幅等適切に運用されると、足元への曝露リスクは低くシューカバーは必要ないと考えます。キャビネット内での作業時には不要ですが、準備や搬送等でこぼしたり、もれたりした際の処理には、他のPPEとともにシューカバーを着用し曝露防止につとめるとよいと思います。
- 引用文献
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- Hambraeus A, Malmorg AS. The influence of different footwear on floor contamination. Scand J Infect Dis 1979; 11: 243-6.
- 厚生労働省医政局通知:医政指発第 0201004号 平成17年2月1日https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0906-3d.pdf
- 日本がん看護学会,日本臨床腫瘍学会,日本臨床腫瘍薬学会.がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン2019年度版.金原出版.2019
- 日本病院薬剤師会監修. 抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針 抗がん薬調製マニュアル 第4版.じほう.2019