医療現場で使用する器具の再生処理の基本は、器具にどのような病原菌や汚染があるかによって処理法を決めるのではなく、その器具がどのような部位に使用されるかによって処理法が決まってきます。
無菌の体内に埋め込むか血液と長時間接触するクリティカル器具は滅菌を必要とします。手術器械、インプラント器材、針などが該当します。
粘膜及び創のある皮膚と接触するセミクリティカル器具は高水準消毒薬を使用した処理もしくは熱水消毒が行われます。容易に滅菌可能な器具類は滅菌処理が行われます。消毒薬としてはグルタラール、フタラール、過酢酸が使用されますが、残留毒性の危険から熱水消毒が適用となります。
創のない正常な皮膚と接触する器具はノンクリティカル器具と言われ、粘膜とは接触しない器具をいいます。これらの器具により病原微生物が伝播される危険は少なく、水拭きもしくは低水準消毒薬での消毒が行われます。
ご質問の器具は口腔内の義歯の調整に使用される器具ですので、歯牙に接触するのみで粘膜内には侵入しないと思われます。その場合には器具を十分に洗浄した後に熱消毒、高水準消毒もしくはアルコール消毒でも構わないと考えます。
大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2022年10月