医療施設で使用したユニフォームの汚染や病原微生物の付着については、多数報告されています1-3)。感染拡大防止のため、ユニフォームの管理には、交差感染防止の視点が必要になります。
まず、施設から自宅へ持ち帰る際には、ユニフォームを媒体とした感染経路を遮断するために、密閉できる袋や容器に入れて持ち運びます。水溶性ランドリーバックを活用すると、洗濯溶液にそのまま投入できるため、曝露防止には最も有効と考えられます。ただし、65℃以上の熱水により溶解するなど製品により特長がありますので、使用する際はその点を確認してください。身近なビニール袋に入れて口を縛って持ち帰る場合は、洗濯時にビニール袋から取り出す行為が生じますから、作業者は曝露防止のエプロンや手袋着用、作業後の手指衛生が必要になります。
洗濯について、研究報告1)によると、自宅の他のものと一緒に洗濯してしまう状況もあるようですが、感染経路の遮断を意識すると、ユニフォームを単独で洗濯することが推奨されます。
ユニフォームなどリネン類の消毒は、80℃、10分の熱処理が第一選択となりますが、自宅で熱水による洗濯が難しい場合は、0.02%次亜塩素酸ナトリウムへの5分間の浸漬を行います4)。次亜塩素酸ナトリウムを使用する際の留意点として、①有機物により消毒効果が低下するため、洗濯前や最初ではなく、洗濯により有機物を除去した後の工程で使用する、②漂白作用をもつため、色柄物の消毒には考慮する、ことがあげられます。代替の方法として、洗濯後にアイロンがけによる熱消毒を行う方法があります。
2日以上使用するユニフォームは繊維に細菌が残存しやすいことや洗い残しが多く、細菌の増殖しやすい環境になっていることが指摘されています1)。自宅で処理しなければならないとなると、洗濯の頻度も少なくなる傾向はありませんでしょうか。できる限り早めの交換を行い、丁寧な洗濯と消毒を行われることをお勧めします。
- 引用文献
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- 岡山加奈, 植村直子, 金嶋悠莉, 萩あや子, 荒川満枝:看護学生のユニフォーム交換における認識や行動の実態とユニフォームの細菌汚染. 環境感染. 2018. Vol.33. no.6 ; 276-284
- 野上晃子, 赤松啓一郎, 小島光恵, 中井知美,辻田愛ら:病院勤務者のユニフォーム汚染状況に関する検討. 環境感染. 2014. Vol.29. no.5;345-349
- 松尾恭子:看護師のユニフォームの汚染や管理に関する研究内容の分析―1993年~2012年に発表された文献をとおしてー. 四国大学紀要. 2014.(B)39 ; 31-38
- 大久保憲, 尾家重治,金光敬二:2020年版消毒と滅菌のガイドライン.へるす出版.2020.