スポンジを通常の方法で消毒することは無理です。スポンジ(ポリウレタンフォーム)は密で小さい多数の穴(発泡体)がある構造で汚れが溜まりやすいため、消毒が行いにくいのです1,2)。たとえば、細菌汚染を受けたスポンジを0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへ30分間浸漬しても、消毒できません。また、熱湯をかける方法ではある程度の消毒効果があるものの、材質劣化のみならず、環境ホルモン溶出の危険性があります。
一方、使用中のスポンジを電子顕微鏡で観察すると、細菌の"巣"になっていることが少なくありません(図)。大学病院で使用中のスポンジを調べたところ、60サンプル中51サンプル(85%)が103~109生菌数/スポンジの汚染を受けていました。おもな汚染菌は緑膿菌で、60サンプル中16サンプル(26.7%)から検出されました。また、緑膿菌汚染を受けたスポンジを室内放置で?乾燥"させても、スポンジ付着の緑膿菌は2か月間生存しました3)。試験管内で培養した緑膿菌を環境表面で乾燥させると、24時間ぐらいで死滅します。しかし、使用中のスポンジには汚れがあり、水分を含み、かつバイオフィルムを形成しているため、2か月間も生存したと思われます。
したがって、スポンジは定期的に新品と交換することが大切です。また、スポンジを使用した器具の洗浄は有効ですので、器具に付着している洗浄液を十分な流水で洗い流すことが求められます。
- 引用文献
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- Jenkins RO, Sherburn RE: Used cot mattresses as potential reservoirs of bacterial infection: nutrient availability within polyurethane foam. J Appl Microbiol 104, 526-533, 2008.
- Oie S, Yanagi C, Matsui H, Nishida T, Tomita M, Kamiya A: Contamination of environmental surfaces by Staphylococcus aureus in a dermatological ward and its preventive measures. Biol Pharm Bull 28, 120-123, 2005.
- Oie s, Kamiya A: Contamination and survival of Pseudomonas aeruginosa in hospital used sponges. Microbios 105, 175-181, 2001.
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2023年10月