人工血管での消毒にポビドンヨードが推奨されている理由は?
人工血管患者は他の患者に比べ感染リスクが高いので、シャント消毒ではより厳重な皮膚消毒が必要になります。殺菌力が強い消毒薬の使用が望ましいのです。
一方、わが国の透析現場では、「透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」が汎用されています1)。そして、本マニュアルでは、穿刺部位に用いる消毒薬としてポビドンヨード(イソジン®など)、70%エタノール、0.1%ベンザルコニウム塩化物および0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩などをあげており、なかでもポビドンヨードを推奨しています。また、「バスキュラーアクセスの消毒ではポビドンヨードが最も推奨される。特に感染に特別な注意を要する人工血管の穿刺部位消毒では第一選択とすることが望ましい。」などの記載があります。このため、わが国の透析現場では、"生体適用が可能な消毒薬のなかでポビドンヨードがもっとも殺菌力が強い"とみなされていることが少なくないのです。これらの理由から、人工血管患者への第一選択消毒薬としてポビドンヨードが推奨されています。
人工血管患者にはポビドンヨードを使用したほうが良いか?
ポビドンヨード(イソジン®など)に比べ、0.5~1%クロルヘキシジンアルコールや63vol%エタノール含有ポビドンヨードのほうが消毒効果が強いことが判明しています2~5)。したがって、人工血管患者のシャント消毒では、ポビドンヨードよりむしろ0.5~1%クロルヘキシジンアルコールや63vol%エタノール含有ポビドンヨードを使用したほうが良いといえます。現在、貴院で導入しておられるクロルヘキシジンALで良いです。
- 参考文献
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- 秋葉 隆:透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル(三訂版)。平成19年度厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服緊急対策研究事業)「透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究(H18-肝炎-一般-002)」、2008。
http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/07_manual/doc/20080627_kansen.pdf - Barnes S, Permanente K: Guide to the Elimination of Infections in Hemodialysis. APIC Headquarters, Washington, 2010.
http://www.apic.org/Resource_/EliminationGuideForm/7966d850-0c5a-48ae-9090-a1da00bcf988/File/APIC-Hemodialysis.pdf - Mimoz O, Karim A, Mercat A, et al: Chlorhexidine compared with povidone-iodine as skin preparation before blood culture. A randomized, controlled trial. Ann Intern Med 131, 834-837,1999.
- Miller DL, O'Grady NP: Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections: recommendations relevant to interventional radiology for venous catheter placement and maintenance. J Vasc Interv Radiol 23, 997-1007, 2012.
- Pratt RJ, Pellowe CM, Wilson JA, et al: epic2: National evidence-based guidelines for preventing healthcare-associated infections in NHS hospitals in England. J Hosp Infect 65S, S1-64, 2007.
- 秋葉 隆:透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル(三訂版)。平成19年度厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服緊急対策研究事業)「透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究(H18-肝炎-一般-002)」、2008。
尾家 重治(山口大学医学部附属病院 薬剤部)
2014年05月