長期留置カテーテルの接続部の消毒には、消毒用エタノールがもっとも適しています。なぜなら、消毒用エタノールはすみやかな殺菌効果を示し、かつ低残留性だからです。また、たとえ微量の本薬が体内に入ったとしても、毒性の心配がないからです。
表に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する消毒用エタノールおよびポビドンヨードの効果を示しました。本表から、消毒用エタノールはポビドンヨードに比べて、すみやかな殺滅効果を示すことが分ります。一方、ポビドンヨードはすみやかな殺滅効果を示さず、かつ低残留性ではありません。したがって、ポビドンヨードは長期留置カテーテルの接続部の消毒には適しません。
次に、「消毒用エタノールでは消毒を繰り返すことでのカテーテルの接続部の劣化が問題にならないか」とのご質問にお答えします。確かに、アルコールにはプラスチック劣化作用があります。しかし、エタノールはイソプロパノールに比べると脂溶性が低いので、エタノールのプラスチック劣化作用はイソプロパノールに比べて弱いです。しかも、人工透析での長期留置カテーテルの接続部の消毒は、1週間で計6回程度と高頻度ではありません。したがって、消毒用エタノールによる接続部の劣化が問題になる可能性は低いと推定されます。
消毒薬 | 菌株*2 | 接触後の生菌数/mL | ||||
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15秒 | 30秒 | 1分 | 2分 | 5分 | ||
消毒用エタノール | A | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
B | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ポビドンヨード | A | 5.7×103 | 4.0×102 | 5 | 0 | 0 |
B | 1.4×105 | 1.0×104 | 1.3×102 | 0 | 0 |
*1 : サスペンジョン法で行った。初発菌量は菌株Aで1.3×106生菌数/mL、菌株Bで2.1×106生菌数/mLであった(2回くり返しの平均値)。
*2 : 臨床分離株
〔回答者 原表〕
尾家 重治(山口大学医学部附属病院 薬剤部)
2014年09月