膣洗浄の目的である「異物を洗い流す」観点からすれば、ご指摘のように必ずしも「ベンザルコニウム塩化物液」を使用する必要はありません。確かに膣洗浄には「ベンザルコニウム塩化物液」は適応とされていますが1)、もし粘膜損傷等で「消毒」が必要な場合は、「洗浄」ではなく消毒薬を浸漬した綿球等で消毒の必要な部位に接触させる方が理にかなっていると思われます。一方、カンジダ症、前期破水、切迫早産などで膣内の感染症コントロールを目的に、「膣洗浄」あるいは「膣洗浄後の抗菌剤膣錠挿入」2) が医師の判断で行われることがありますが、この場合の洗浄も膣内を洗い流すことに他ならないため、「消毒薬」を積極的に使用する必要はないと思われます。
最近では、「膣洗浄」自体を実施しない施設が増えてきています。これは、ともすれば習慣的に行われてきた「膣洗浄」が見直されてきたことと合わせて、「洗浄液」の管理(適温の維持、清潔な洗浄液の維持管理、必要物品の管理など)の煩雑さなどが要因だと思われます。
いずれにしても、根拠に基づいた診療が患者の安全につながるとともに、経済性を含めた効率的な医療にも結び付くものと考えられます。
- 参考文献
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- 小林寛伊指導 消毒薬テキスト 第4版 吉田製薬 2012
- 林 瑞成 外陰・膣カンジダ症、トリコモナス膣炎、臨床婦人科産科 2012;66(5):120-125
菅原 えりさ (東京医療保健大学大学院 准教授)
2014年12月