洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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手術医療の実践ガイドラインに環境の消毒薬として、加速化過酸化水素水が記載されていますが、国内では雑品の取り扱いとなっています。血液などで環境を汚染した場合の消毒薬として選択してよいでしょうか。(Y.F.)

加速化過酸化水素水(accelerated hydrogen peroxide)はカナダで開発された製剤で、カナダおよび米国で中水準消毒剤として使用されています1~3) 。 また、ご指摘どおり、本剤は「手術医療の実践ガイドライン(日本手術医学会)」にも記載されています4)

しかし、わが国では加速化過酸化水素水は雑品の取り扱いとなっています。そのうえ、本剤に関するデータは、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系製剤やアルコールに比べると乏しいのが現状です。とくに、安全性や安定性などのデータが十分ではありません。このため、わが国における消毒・滅菌に関する指標的成書である「消毒と滅菌のガイドライン(へるす出版)」への0.5%加速化過酸化水素水の記載はありません5,6)。このような現状から、血液汚染を受けた環境の第1選択消毒剤としては、加速化過酸化水素水よりむしろ次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系製剤やアルコールなどが勧められます。

参考文献・図書
  1. Omidbakhsh N, Sattar SA: Broad-spectrum microbicidal activity, toxicologic assessment, and materials compatibility of a new generation of accelerated hydrogen peroxide-based environmental surface disinfectant.Am J Infect Control, 34: 251-257, 2006.
  2. Alfa MJ, Lo E, Wald A et al: Improved eradication of Clostridium difficile spores from toilets of hospitalized patients using an accelerated hydrogen peroxide as the cleaning agent. BMC Infect Dis, 15;10:268. doi: 10.1186/1471-2334-10, 2010.
  3. US Environmental Protection Agency: Selected EPA-registered Disinfectants. 2014.
  4. 日本手術医学会:手術医療の実践ガイドライン(改訂版).2013.
    http://www.chinaacac.cn/chinaacac2/upFiles/download/
    2013082437111641.pdf
  5. 厚生労働省:医療機関における院内感染対策について.医政地発1219第1号,平成26年12月19日.
    http://www.aoshi.aomori.med.or.jp/kansenshou1.pdf
  6. 小林寬伊(編著):消毒と滅菌のガイドライン,へるす出版, 2011.

尾家 重治(山口大学医学部附属病院 薬剤部)
2015年05月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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