Gerstmann-Straussler-Scheinker(ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー:GSS)病は、異常なプリオン蛋白が脳内に蓄積して脳神経細胞の機能を障害し、脳に海綿状変化を生ずる遺伝性(家族性)プリオン病の一種です。
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease: CJD)の伝播(感染)の可能性において、内視鏡を用いた検査等で留意すべきは変異型CJD(vCJD)のみです。そのためPercutaneous endoscopic gastrostomy(経皮内視鏡的胃瘻増設術: PEG)において関わりのある臓器の感染力価はいずれも低く、使用した内視鏡を介して感染する可能性はかなり低い状況と考えます。胃瘻を作成する場合には、内視鏡の使用においても内視鏡を使用しない直接手術においても孤発性CJD(sCJD)の場合には血液感染の報告がないことを考慮すると、どちらもリスクは同等です。
PEG増設用の内視鏡を介したCJD感染の可能性を完全に排除するためには、使用した器具を破棄する必要があります。その対応は現実的ではないと考える場合には、軟性内視鏡の処理は、以下に示す方法で実施してください。 (非耐熱性の軟性内視鏡の処理)1,2)
アルカリ洗浄剤を使用した洗浄(洗浄剤の濃度および温度等はメーカー指示に従います)を実施し、その後、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌を2サイクル実施します。過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌器のNXタイプを使用する場合では、1サイクルの処理にて不活性化できます。本処理法においてアルカリ洗浄剤や過酸化水素を使用しますので、あらかじめ器材との適応性に留意が必要です。
- 引用文献
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- 小林寬伊、大久保憲. CJDか否か不明の患者のハイリスク手技に用いられた手術器械等に対する処理方法. 厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班(主任研究者 水澤英洋) プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)2008: p53-77.
- Yan ZX, Heeg SP, Roth K, Mauz PS. Low-temperature inactivation of prion protein on surgical steel surfaces with hydrogen peroxide gas plasma sterilization. Zentr Steril 2008; 16: 26-34.