次亜塩素酸ナトリウムは汚れ(有機物)、パルプ(ペーパータオルや新聞紙など)および木質の材質(ベニア板など)等により、大幅な効力低下が生じます1-3)。
一方、油性マジックの主成分はアルコールやキシレンなどの有機溶媒、無機質に分類される顔料、および樹脂などです。したがって、たとえ油性マジックのインクが次亜塩素酸ナトリウム溶液に溶けたとしても、その消毒効果に問題はないと推定されます。
実際に、油性マジック(ペンタッチ®,SAKURA)をシャーレ内に1㎠ほど塗布して、その中に0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム5mLを注いで溶解させた後に、Bacillus atrophaeus ATCC6633の芽胞に対するこの溶液の効果を調べてみました。その結果、油性マジックによる0.1%次亜塩素酸ナトリウムの効力低下はありませんでした。
- 引用文献
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- Coates D: Comparison of sodium hypochlorite and sodium dichloroisocyanurate disinfectants: neutralization by serum,J Hosp Infect, 11: 60-67, 1988.
- 小林義正,他:次亜塩素酸ナトリウム含浸環境清拭クロスの残留塩素濃度に関する検討,医療関連感染,8:17-26,2015.
- Oie S, et al: Disinfection methods for spores of Bacillus atrophaeus, B. anthracis, Clostridium tetani, C. botulinum and C. difficile, Biol Pharm Bull, 34: 1325-1329, 2011.
尾家重治(山口大学医学部附属病院 薬剤部)
2016年03月