ご質問の墨汁の局所注射液は液体ですから、液体の滅菌法を行います。すなわち、中材で汎用されている真空脱気プリバキューム式ではなくて、薬剤部(薬局)で汎用されている重力加圧脱気式の高圧蒸気滅菌器を用いて滅菌を行います。オートクレーブ対応で注射用の空バイアルを購入して、その中へ希釈した墨汁を入れて、121℃・20分間や115℃・30分間などの条件で滅菌します。
したがって、墨汁の局所注射液の調製は中材よりむしろ薬剤部で行うのが望ましいといえます。しかしながら、1995年に製造物責任法(PL法)という法律が施行されたため、薬剤部での院内製剤の調製が行いにくくなっているのが現状です。とくに注射剤の場合、無菌であること以外にエンドトキシンなどの有害物質を含んでいないことや、不溶性異物などについての規定があります。また、院内の倫理審査委員会での承認が必要になります。
これらのことから、ご質問の「本来正しい方法はあるのか」に対する回答は、「薬剤部で注射剤の条件に合致することを確かめて、院内の倫理審査委員会で承認してもらう」です。ただし、墨汁が注射剤の条件に合致することはないと思います。
なお、ご質問者が現在行っておられるような滅菌済みの墨汁の局所注射液を使用することは、医師の責任のもとであれば問題はありません。
尾家 重治(宇部フロンティア大学 人間健康学部看護学科 教授)
2016年09月