HTLA-1とはヒトT細胞白血病ウイルス(Human T-cell LeukemiaVirus Type 1)の略です。
このウイルスが白血球内のT リンパ球に取り込まれると遺伝子の中で生き続け、体外に排除されることなく「持続感染」状態となります(キャリア)。
HTLA-1感染では「成人T 細胞白血病」「HTLV-1 関連脊髄症(HAM)」「HTLV-1 関連ぶどう膜炎(HU)」を発症することが知られています。しかし、これらの疾患の発症割合はキャリア全体の5%に過ぎず、大多数は生涯発症することはありません1)。
感染経路は、主に母子感染(主に母乳より)や性交渉ですが、臨床的には血液、体液、分泌物に注意をすることになります。また、HTLA-1は弱いウイルスで、熱や乾燥や洗剤などで簡単に死滅し、さらに大量に体内に取り込まれなければ感染は起こらないとされています。
まとめると、対策の基本は標準予防策です。キャリアの母親が使用した哺乳瓶等は、洗浄と熱消毒、あるいは、洗浄と次亜塩素酸ナトリウム希釈液(0.01%*~0.05%程度)2)で浸漬消毒を行います。しかし、言うまでもなくこれらは特別な対策ではなく、医療施設内で行われる通常の管理方法です。「HTLA-1」だからと言って過剰な対策を行う必要はありません。
- 引用・参考文献
-
*ミルトンR(杏林製薬株式会社)の希釈濃度を参考にした。
- よくわかる詳しくわかるHTLV-1 平成22年度 厚生労働科学研究費補助金研究事業
- 吉田製薬文献調査チーム 消毒薬テキスト 第5版 97-101 2016
菅原 えりさ(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 教授)
2017年04月