洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

皮膚の洗浄・消毒、創傷面の洗浄・消毒を目的に、ベンザルコニウムなど原液から希釈し、高圧蒸気滅菌し使用しています。薬剤師の手間やクリーンベンチで作製していないため、汚染させる恐れがあり、製品化へ切り替えたいのですが、説得できるデータありませんか?(A.U.)

希釈後のベンザルコニウム塩化物には高圧蒸気滅菌を行っておられるようですから、微生物汚染の観点からは全く問題ありません。

しかし、リスクマネジメントの観点から、自施設で生体用の消毒薬の希釈調製を行うことは問題です。なぜなら、生体用の消毒薬の希釈調製を誤ると重大な結果を招くからです。たとえば、0.05%クロルヘキシジンは創傷部位の消毒に有用ですが、誤って1桁高い0.5%濃度を用いるとショックが生じます1,2)。また、回答者は以前に「オスバン綿球を性器粘膜に適用した患者さんが刺激感を訴えている」との電話を看護師からいただき、「すぐシャワー室に連れて行ってください」と答えた経験が2回ほどあります。0.02%液の含浸綿を調製すべきところを誤って1%液の含浸綿を調製してしまったために、性器粘膜に化学熱傷が生じたのです。自施設で消毒薬の希釈・調製を行うと、薬局または病棟いずれで行ったとしても希釈の誤りが起こりえるのです。

消毒薬の希釈・調製時の濃度誤りの防止策として、希釈・滅菌済み製品の使用があげられます。生体に用いるベンザルコニウム塩化物やクロルヘキシジンでは、自施設での希釈調製は中止して、希釈・滅菌済み製品を使用してください(図)。

引用文献
  1. Okano M, et al: Anaphylactic symptoms due to chlorhexidine gluconate. Arch Dermatol. 125: 50-52, 1989.
  2. Sachs B, et al: Anaphylaxis and toxic epidermal necrolysis or Stevens-Johnson syndrome after nonmucosal topical drug application: fact or fiction? Allergy. 62: 877-883, 2007.

尾家 重治(宇部フロンティア大学 人間健康学部看護学科 教授)
2017年11月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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