NICUでは厳重な感染対策が必要となりますが、おしゃぶり・乳首・哺乳瓶の滅菌は必ずしも必要ではありません。消毒でも良いです。なぜなら、洗浄・消毒後のおしゃぶりなどに少量の芽胞が残存していたとしても、感染源にはなりにくいからです1)。すなわち、芽胞まで殺滅する必要性は必ずしもありません。
なお、酵素洗剤を用いて十分な洗浄を行っておられるご質問者の施設においては当てはまらないかもしれませんが、一般論としておしゃぶり・乳首・哺乳瓶は汚れが除去しにくい用具類の1つです。一方、次亜塩素酸ナトリウムは汚れの存在下で急激な効力低下を示す消毒薬です2)。このような理由から、おしゃぶり・乳首・哺乳瓶の第1選択消毒法は熱水です3-6)。ウォッシャーディスインフェクタや家庭用食器洗浄機などを用いた熱水消毒が望ましいといえます。この他、ガラス製の哺乳瓶には高圧蒸気滅菌も適しています。
NICU児へのカンジダの定着は、医療スタッフの手指が主原因と推定されています7)。医療スタッフの手指常在菌であるCandida albicans(カンジダ・アルビカンス)やCandida parapsilosis(カンジダ・パラプシローシス)などがNICU児へ定着すると、カンジダ菌血症のリスクファクターとなり得ることに注意が必要です。
- 引用文献
-
- Hobbs BC, Roberts D: Food Poisoning and Food Hygiene 6th ed., Edward Arnold (London), 1993, pp.219-237.
- 尾家重治,小林晃子,古川裕之:Clostridium difficileの芽胞に対する次亜塩素酸ナトリウムおよびジクロルイソシアヌール酸ナトリウムの消毒効果.環境感染.27: 119-122, 2012.
- Barie D: The provision of food and catering services in hospital. J Hosp Infect. 33: 13-33, 1996.
- EbnerW, Eitel A, Scherrer M, et al: Can household dishwashers be used to disinfect medical equipment? J Hosp Infect. 45: 155-159, 2000.
- Oie S, Kamiya A, Tomita M, et al: Efficacy of disinfectants and heat against Escherichia coli O157:H7. Microbios. 98: 7-14, 1999.
- 小林寛伊(編著):補訂 消毒と滅菌のガイドライン.へるす出版,2014.
- Saiman L, Ludington E, Dawson JD, et al: Risk factors for Candida species colonization of neonatal intensive care unit patients. Pediatr Infect Dis. 20: 1119-1124, 2001.
尾家 重治(東京医療保健大学 客員教授)
2018年05月