万能ツボの外で絞るべきことを裏付ける文献は見当たりませんが、関連した文献があります。万能ツボ内の消毒綿球の微生物汚染についての文献です1,2)。それによると、7日間以上にわたるくり返し使用で、アルコールやポビドンヨードの消毒綿球の微生物汚染はありませんでした。しかし、ベンザルコニウム塩化物やクロルヘキシジンの消毒綿球では微生物汚染がありました。医療スタッフが鑷子で取り出していた場合で12~13%、患者自身が素手で取り出していた場合で66%の汚染率でした。汚染菌量はしぼり液1mLあたり103~108個/mLで、主な汚染菌は緑膿菌、セラチア(Serratia marcescens)アルカリゲネス菌(Alcaligenes xylosoxidans)およびマルトフィリア菌(Stenotrophomonas maltophilia)などのグラム陰性桿菌でした(表)。
これらの結果から、たとえ消毒綿球を鑷子で取り出しても、微生物汚染が生じる可能性があることが分かります。したがって、万能ツボ内の消毒綿球はできる限り清潔に取り出すのが望ましいです。手指からの落下菌などの混入防止のため、ご質問者が述べておられるとおり、消毒綿球は万能ツボの外(膿盆など)で絞るのがよいと推定されます。とくに、低水準消毒薬の消毒綿球では万能ツボの外で絞るのがよいでしょう。
なお、ベンザルコニウム塩化物などの低水準消毒薬の消毒綿球は細菌汚染を受けやすいので3-6)、個包装の滅菌済み製品の使用が勧められます。
- 引用文献
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- 尾家重治:医薬品の微生物汚染とその対策「第10回消毒薬」.月刊薬事.59(3): 153-161, 2017.
- Oie S, Kamiya A: Microbial contamination of antiseptic-soaked cotton balls. Biol Pharm Bull. 20: 667-669, 1997.
- Oie S, Kamiya A: Microbial contamination of antisepatics and disinfectants. Am J Infect Control. 24: 389-395, 1996.
- Oie S, Kamiya A: Microbial contamination of water-soaked cotton gauze and its cause. Microbios. 104: 159-166, 2001.
- Oie S, Kamiya A: Bacterial contamination of commercially available ethacridine lactate (acrinol) products. J Hosp Infect. 34: 51-58, 1996.
- Oie, S, et al: Microbial contamination of a disinfectant-soaked unwoven cleaning cloth. J Hosp Infect. 82: 61-63, 2012.
尾家 重治(東京医療保健大学 客員教授)
2018年06月