嘔吐物の処理に際しては、ノロウイルスを想定した感染対策が必要です。
患者あるいは医療従事者の皮膚に嘔吐物が付着した場合は、ペーパータオルなどで嘔吐物を取り除き、石けんと流水で十分に洗浄します。
嘔吐物が付着した寝衣やシーツなどのリネン類は、汚染範囲を広げないようにまたウイルスが飛散しないようにペーパータオルなどで嘔吐物を取り除き、洗浄剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします1)。下洗いしたリネン類は、85℃・1分間以上1)または80℃・10分間2)の熱水洗濯を行います。熱水洗濯ができない場合は、0.05~0.1%(500~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウムへ30分間浸漬します1, 2)。次亜塩素酸ナトリウムは、漂白作用があるため色柄ものへの使用は注意が必要です。また、嘔吐物を洗浄した場所は、200ppm次亜塩素酸ナトリウムで消毒後、洗浄剤を使って掃除します1)。
ベッドマットなどすぐに洗濯できない場合は、スチームアイロンを用いて85℃・1分間以上の加熱を行う方法があります1)。しかし、温度上昇に時間がかかり、温度上昇は対象物によって異なるため注意が必要です3)。洗浄および消毒が行いにくいベッドマットなどは、予め防水カバーで覆っておき汚染したら交換します。
嘔吐物の付着したリネン類の取り扱いは、手袋、ガウン、サージカルマスク、および嘔吐物の飛沫が目に入る可能性がある場合はゴーグルも着用して行います4)。
- 引用文献
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- 厚生労働省. ノロウイルスに関するQ&A. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html. 2019年 1 月 7日現在.
- 小林寛伊編集. 新版増補版 消毒と滅菌のガイドライン. へるす出版, 東京, 2015.
- 東京都感染症情報センター. ノロウイルス対策緊急タスクフォース 2009年最終報告書. http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/gastro/noro_task/final_report.pdf. 2019年 1 月 7日現在.
- 国公立大学附属病院感染対策協議会編集. 病院感染対策ガイドライン2018年版. じほう. 東京. 2018.
寺川 香純、遠藤 博久(サラヤ株式会社 学術部)
2019年01月