患者の吐物や排泄物で環境が汚染された場合には、ノロウイルスを対象として処理を担当する者はマスク、手袋、エプロンなどの個人用防護具(personal protective equipment: PPE)を確実に装着することが大切です。
吐物や排泄物によるノロウイルス環境汚染の場合には、周辺汚染の無いようにふき取り、そのあとは次亜塩素酸ナトリウム若しくは熱水により消毒してください。次亜塩素酸ナトリウムは有機物により不活性化しますので清拭消毒を行う場合の濃度は有機物の遺残がある場合には 0.5%(5,000ppm)程度が必要です。目に見える有機物汚染がない場合には 0.1%(1,000ppm)で処理します。次亜塩素酸ナトリウムによりカーペットなどの柄物は漂白されますので、その場合には熱水の利用が推奨されます。80℃ 10分間が基本ですが、70℃ 5分間でも有効とされています。簡便な方法として吐物を処理後に新聞紙を敷いてその上からスチームアイロンで熱を加える方法もあります。
ノロウイルス感染患者の吐物が舞い上がった場合に、塵埃を吸い込むことで発症する場合がありますので、処理する担当者は必ずマスクを着用してください。一般掃除機による吸引清掃や不適切な処理を行うと、ウイルスが空中に舞い上がって、多数のアウトブレイクを引き起こす場合があります。ごくわずかなウイルス量(10数コピー)で感染しますので、厳重な対策が必要です。
ノロウイルス患者が使用した便座やフラッシュバルブなどの高頻度接触箇所の消毒は、使用毎に清拭消毒を行う必要があります。次亜塩素酸ナトリウムの場合は 0.1%(1,000ppm)、消毒用アルコール清拭は不確実な方法ですので、30秒間程度接触させる丁寧な消毒が求められます1)。
高頻度接触表面の消毒は一日一回で良いという表現がありますが、一般細菌による環境汚染に対する感染防止を対象とした表現であり、一般細菌感染防止のためにはドアのノブや床頭台表面などは少なくとも一日一回以上清拭もしくは消毒が必要と解釈してください。ノロウイルス感染防止のための環境消毒は、汚染ごとに丁寧な消毒を毎回実施すればよいです。
- 引用文献
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- 小林寬伊、大久保憲、尾家重治. ノロウイルスの消毒. 於 小林寬伊 編集. 新版増補版 消毒と滅菌のガイドライン. 東京:へるす出版 2015; 80-81.