(1) 0.3%過酢酸の環境清拭の安全性について
過酢酸製剤には種々の組成の製品がありますが、0.3%過酢酸(アセサイドR、エスサイドR)についてのご質問としてお答えします。
0.3%過酢酸の蒸気は眼や呼吸器系の粘膜を刺激します1)。
一方、0.3%過酢酸で環境清拭を行うと、大量の蒸気曝露を受ける可能性があります。実際、0.3%過酢酸で床の清拭を行うと、お寿司に似た酢の臭いがしますが、この蒸気には強い刺激性があります。したがって、0.3%過酢酸での環境清拭は安全ではありません2,3)。
なお、0.3%過酢酸は現在市販されている消毒薬のなかでもっとも強力な殺菌効果を示します。したがって、バイオテロによる炭疽菌汚染の環境など特殊な状況下では、0.3%過酢酸による環境清拭を考慮しても良いでしょう4)。
(2) PHMB(ポリヘキサメチレンビグアナイド)の環境清拭の有効性について
クロルヘキシジンの類似化合物であるPHMBは、グラム陽性および陰性菌に対する殺菌力がクロルヘキシジンに比べて強いことが判明しています5,6)。したがって、PHMBは低水準消毒薬として利用可能です。PHMB清拭はMRSAや腸球菌などのグラム陽性球菌、緑膿菌やアシネトバクターなどのグラム陰性桿菌、およびカンジダなどの酵母様真菌などで汚染を受けた環境の消毒に有効と推定されます5)。さらなるPHMBの評価が待たれています。
- 引用文献
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- Rideout K, et al: Considering risks to healthcare workers from glutaraldehyde alternatives in high-level disinfection. J Hosp Infect, 59: 4-11, 2005.
- Hess JA, et al: Epidermal toxicity of disinfectants. Am J Dent, 4: 51-56, 1991.
- CDC. Guideline for disinfection and sterilization in healthcare facilities, 2008
http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/guidelines/Disinfection_Nov_2008.pdf - Oie S, et al: Disinfection methods for spores of Bacillus atrophaeus, B. anthracis, Clostridium tetani, C. botulinum and C. difficile. Biol Pharm Bull, 34: 1325-1329, 2011.
- Medvedec Mikic I, et al: Antimicrobial effectiveness of polyhexamethylene biguanide on Enterococcus faecalis, Staphylococcus epidermidis and Candida albicans. Med Glas (Zenica), 15: 132-138, 2018.
- Fjeld H, et al: Polyhexanide - safety and efficacy as an antiseptic. Tidsskr Nor Laegeforen, 136: 707-711, 2016.
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2019年03月