一般的に「予洗い」とは、汚れのひどいものを洗浄する時などに、ざっと汚れを落としておくことを言います。
「予洗い」の明確な基準はないと思います。なぜなら、洗浄効果に影響を与える要因として、洗浄方法(用手洗浄、浸漬洗浄、機械洗浄など)、汚染の程度(有機物、微生物による)、物理的形状(管腔、蝶番、機器の隙間等)などがあり、様々に影響し合うことから予洗いの基準の明示は困難です。「予洗い」の目的は、洗浄の仕上がりを十分なものにすることと考えますと、一般的に洗浄が難しい状態等は明らかですので、予洗いの必要性の目安になります。
先ずは、長時間放置され、汚れが乾燥固着してしまった器材です。使用済み器材の扱いで最も留意すべき点は、器材の乾燥防止です。よって、酵素洗浄剤の使用説明書にも「使用後速やかに浸漬する」と記載されています。
また、骨片や体組織が大量に付着した器材は、洗浄で剥離した組織がすすぎ中に再付着することがあるので、あらかじめ固形物を取り除いておく。大量の血液が付着した器材は、そのまま洗浄すると洗浄水が発砲(血液は蛋白質なので発砲する)し、洗浄時間がかかる、洗浄力が低下する可能性があるため、ある程度の血液を落としておく。水溶性でない汚れ、例えば一部の軟膏などが付着した器材は、ぬぐい取っておくなどです。
自施設での洗浄評価に基づき、その結果によって洗浄方法の見直しと共に、予洗いの必要性を査定することが望まれます。洗浄評価で問題が無ければ、予洗いの必要はありません。予洗い実施時の汚染曝露や周囲環境への汚染拡散も考慮し、必要な場合のみ実施しましょう。
酵素洗浄剤を適切に使用することも重要です。酵素はアミノ酸が多数重合してできた高分子化合物で、医療器具を対象とする酵素洗浄剤のほとんどには、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼが配合されています。酵素の働きが洗浄力に大きく関与1)しますので、酵素反応の特徴を理解し、適切に使用しましょう。
〔使用上の留意点〕
- 最も活発に作用する40~50℃の温度を一定に保ち使用する。
- 酵素蛋白がアレルゲンとなる危険性(吸入毒性)があるため、スプレー式では使用しない。
- 汚れの程度により、浸漬時間や使用濃度を調節(説明書参照)する。
- 分解可能な器具は分解し、鉗子などは開いた状態で浸漬する。
- 内腔のあるものは洗浄液を注入し、内腔に洗浄液を行き渡らせる。
- 洗浄液は最低1日1回交換する。
- 大量の血液付着器材等の浸漬等により洗浄液の汚染が激しいときはその都度交換する。
- 引用文献
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- 伏見了他;酵素洗剤中プロテアーゼ活性の保存安定性および洗浄時温度と洗浄力の関係に関する研究、医科器械学、70(12):648-51、2000.