食品添加物とは、食品衛生法では食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加して使用できるものを指します。すなわち、人に対して安全な組成であることを示します。
消毒薬は決められた濃度で、接触時間と温度が限定された状況で常に同一の効果を示さなければなりませんが、次亜塩素酸水は酸性電解水の総称であり、製造条件により様々な残留(有効)塩素濃度のものが精製されます。さらに、紫外線や有機物により容易に不活性化してしまうため、消毒薬としての認識は不適切です。
酸性電解水は「手指の殺菌洗浄」として一部の製造機が薬事法認可(医療用具認可)を取得したことから医療現場において使用されていた経緯があります。その後,多くの企業が参入し,様々な機種が登場したため,酸性水の性状,効果,殺菌機構および生成装置の仕様は統一性を欠き,現場では混乱しています。この延長線上に次亜塩素酸水が存在します。
認可を受けた手指消毒用の酸性水製造装置は、流水式で2分間、手指全面に酸性水がかかるように洗うこととなっており、指先や爪下に菌が残るので注意が必要となっています。手の汚れを予め石鹸などで確実に洗い落としてから使用しないと殺菌効果は期待できません。また手荒れを生ずることがありますので、スキンケアを十分行うように指導されています。
手術時の手指消毒用として使用できるものではありません。その理由は、次亜塩素酸水は残留(有効)塩素濃度が低く、一部の製品を除いて多くは50ppm以下であり、有機物により容易に不活性化されてしまいます。たとえば通常の酸性水の場合には酸性水1リットルに対して有機物1mL(すなわち0.1%の濃度)が混入するだけで普通の水となってしまう非常に不安定な物質です。さらに、保存した場合には条件次第ではかなり有効性が失われてしまい、生成直後のものを流水式で使用するのが基本です。手などの表面には有機物が多く存在していますので、次亜塩素酸水では確実に除菌できません。
更に環境消毒に使用する場合にはもちろん有機物が存在しない状況で使用する必要があります。また、木製の手摺りや床は次亜塩素酸を不活性化する性質もありますので、消毒効果を過信しないようにしなければなりません。
その他、次亜塩素酸水は金属腐食性がある点と、有毒な塩素ガスを発生するため部屋の換気が必要です。これらの使用上の注意点を守る必要があります。
次亜塩素酸水製造装置は、電気分解に用いる水道水の成分など、原水の性状により安定した次亜塩素酸水が供給されにくい場合もあります。そのため、臨床現場では常に成分の確認が必要となります。pHや酸化還元電位の測定のみでは不十分であり、残留(有効)塩素濃度を現場で毎日チェックする必要があります。院内で製造した溶液を患者さんの診療行為に使用するのであれば、その溶液の性状について責任をもって測定し提供しなければなりません。生体への使用法を拡大したり、患者治療に使用したりすべきものではありません。十分注意していただきたいと思います。