感染制御において、履物(上履きの靴底)の消毒は基本的には不要です。上履きや床などの環境を消毒しても、その後に人が使用したり通行したりすれば、速やかに元の汚れに戻ってしまいます。しかし多剤耐性菌感染や今回話題の新型コロナウイルス感染症などの特殊な微生物が対象の場合には、一部埃とともに舞い上がった病原微生物が原因となって感染を拡大しかねません。床やテーブル表面の定期的な消毒が必要となり、また、手が頻繁に触れる箇所も微生物伝播の原因となりやすいため、そのような部分は定期的な消毒の対象となります。
手が頻繁に触れる箇所は消毒用エタノール消毒が推奨されます。環境消毒には次亜塩素酸ナトリウムによる清拭消毒が有効です。
一方、今回ご質問のごとく、履物交換が感染防止となる場合は限られています。上履きが血液や体液などの湿性生体物質で汚染した場合には、速やかに汚染を除去するか消毒が求められます。通常の使用であれば汚れが目立つ場合以外は履物の交換もしくは上履きの洗浄・消毒は必要ありません。
履物は下足や上履きに限らず汚染しているものと認識して、手が触れた場合にはアルコールなどで手指消毒することが大切です。
大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2020年07月