ご質問にあるように、持続点滴用のメインルートの側管から抗菌薬用の輸液ルートを接続して、投与を終えた後、ルートをそのままにしてクレンメでルートを閉めると、ルート内に抗菌薬の残液が約8時間溜まったままの状態になります。そして、この残液は次回抗菌薬を投与する際(1日3回投与として約8時間後?)に、再度血管内に流入することになります。側管の輸液ルート内に残った薬剤がどの程度、微生物等で汚染されているか明らかなデータはありませんし、血管カテーテル関連感染予防のためのCDCガイドライン, 2011においても、「断続的に使用された輸液セットの交換頻度に関する勧告はない。」とされています。
しかし、血流感染が起これば患者は重篤な状態になります。輸液ルート内の残液に微生物汚染の可能性がゼロではないこと、不必要なルートを付けていることで、患者さんが歩行中の転倒の原因になる可能性や、余計なルートを何かに引っ掛けて抜去する危険性があることなど、患者の不利益や負担になることも考えられます。そのため、感染制御と医療安全などの総合的観点から判断する必要があると思います。また、抗菌薬が患者個別に適正に使用されているか検討し、不要なルートは抜去する必要があります。
- 参考文献
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CDC:Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections, 2011
http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/guidelines/bsi-guidelines-2011.pdf
吉田 理香(東京医療保健大学大学院 教授)
2020年07月