業者貸し出し手術器械 Loan Instruments(LI)は、一回の手術に使用するために借用する手術器械をさします。これらの器械は事前に使用された他院での手術の状況が確実に伝えられていない場合があり、患者安全を損なう可能性があり危険性があります。緊急手術を除いてあらかじめ余裕をもって手術計画が立てられなければなりません。
仲介する貸出業者においては、器械の適正な洗浄、滅菌、清潔保管に留意する必要があります。そのため、事前に使用された病院での洗浄方法、滅菌方法、使用方法、分解方法、使用後処理方法などについての取り扱い明細書を提出しなければなりません。LIセットごとに洗浄、滅菌方法はもちろん分解方法、滅菌後の保管方法などを分かりやすく記載された説明書を添付します。
新たにLIを受け取った施設では、手術前洗浄の有無、滅菌方法、使用後返却までの処理手順を記載して、それに基づいて処理しなければなりません。
受け取ったLIは通常は滅菌処理されていますが、さらに必要な器械を洗浄して滅菌後に手術に使用します。
緊急手術を除き、納入されたLIは使用前に手順書に従って洗浄滅菌が行われていることが重要です。しかし、術前の時間的余裕がない場合には、滅菌して納入されたLIを洗浄せずに再滅菌のみをして使用せざるを得ない場合があります。その場合には、使用施設側において処理責任の所在を明確にして、記録と署名を確実に残しておかなくてはなりません。
大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2020年08月