洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

コロナ禍において、紫外線によるマスク等の再滅菌も有効とのことで、持ち運び可能な紫外線殺菌ライトが販売されております。10秒から30秒程度の照射で殺菌できるとのことですが有効なのでしょうか。(K.W.)

紫外線(ultraviolet rays: UV rays)照射に使用されるUVは、その波長によりUVA、UVB、UVCに分けられており、環境消毒に使用される種類はUVCです。波長は200~270nmのものが使用され、これまでの殺菌灯は水銀灯を使用し、最大殺菌効果のある253.7nmの紫外線を放射する方式のものです。

UVの殺菌効果は有機物の存在、波長、懸濁液の状況、温度、微生物の種類、管球との距離に左右されるUV強度の影響を受け数十分から1時間前後の照射が求められます。近年、パルス方式キセノン紫外線消毒法(PX-UV)が開発されて臨床で応用されるようになりました。PX-UVはキセノンガスを封入した光源をパルス照射する方式で、数分間の照射でも殺菌可能となりました。さらに、高出力タイプの紫外線殺菌灯照射装置および現在研究段階ではありますが「遠紫外線C波(222nm波長)」と呼ばれる紫外線殺菌灯では数分間の照射にて殺菌できるといわれています。

ご質問のごとくハンディータイプのもので新しい方式の殺菌灯は現在発売されていませんので、従来方式の物では長時間照射が必要となります。さらに、マスクは繊維製品もしくは不織布製品ですので、繊維の隙間に必ず影となる部分が存在します。影となった部分には確実な殺菌効果は期待できません。そして、UVCは生体に対して危険性が高く、皮膚がんや眼疾患を引き起こすため、人がいない状況でのみ使用できます。

マスクの素材にもよりますが、使用後の再生には熱水消毒が最も効果的と思います。ポリプロピレン製は100~140℃、ポリエステル製は225~276℃に耐えられます。マスクは洗濯後に乾燥させてスチームアイロンをかける方法もありますが、洗うとせっかくの機能が低下してしまう製品もあり、消毒用エタノール噴霧して消毒する方法もあります。素材を考慮した再生方法を検討してください。


大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2020年11月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
ホームページに関するお問い合わせはこちら