胸腔ドレーンは、手術や疾患などにより胸腔内に溜まった空気や液体(血液、胸水、膿など)を、体外に排出するために用いられます。観察を密に行い、確実なドレーン管理が求められます。
胸腔ドレーンの管理手順における『挿入部の消毒』では、1日最低1回は必ずポビドンヨード等で消毒1)、滅菌透明フィルムドレッシング材の交換は汚染があるときには2~3日ごと、医師の指示がある場合に行う2)等、様々な表記がみられます。また、消毒に関して記載のない文献も散見されます。挿入部位の消毒に関する頻度、および保護材料別の消毒頻度による感染率の違いに関して、エビデンスとなる文献は見つけられませんでした。
当院の現状を示します。呼吸器外科では、挿入部位に特に問題が生じていない場合は、抜去するまで挿入部の消毒処置は基本的に行いません。また、呼吸器内科では1週間を目安に消毒処置を医師が行っています。その理由として、処置によってドレーン位置のズレに繋がる可能性、感染曝露リスクを高める可能性、ポビドンヨードなどによる挿入部の頻回な消毒は、皮膚炎を惹起し細菌繁殖を助長する可能性などがあげられます。以前、呼吸器内科では毎日行っていましたが、消毒頻度の変更が影響したと考えられる感染等の増加は認めていません。
消毒頻度に関わらず、刺入部の観察が重要です。挿入部からの出血や浸出液の有無、感染徴候の有無、ドレーンの固定状況、チューブの屈曲・ゆるみ、ずれなどがないかを観察します。挿入部のドレッシング方法は、透明ドレッシングのみ、Y字の切込みガーゼの上に透明ドレッシング貼付、滅菌ガーゼなど様々です。大事な点は刺入部の観察を確実に行うことで、透明ドレッシングであれば挿入部の観察が容易です。挿入部位から出血や滲出液漏出がある場合は滅菌ガーゼを用い、適宜交換しましょう。
患者さんの状態や観察の状況に合わせ、消毒頻度を検討するのが良いと考えられます。その処置において重要な点は、処置前後の手指消毒の徹底、および清潔操作の遵守です。
- 引用文献
-
- 窪田敬一編;全科ドレーン管理マニュアル、照林社、東京、2008;44-8
- Nursing Skills、胸腔ドレーン挿入中の管理、エルゼビア
https://www.nursingskills.jp/SkillContent/Index/324550(2021年1月4日アクセス)
医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)