継ぎ足しについて
これらの5種類の処置薬のうちの4種類では、1週間程度の継ぎ足し使用は差し支えありません。しかし、ボスミンR+キシロカインRの混合液では、毎日の交換が望ましいです。
ご質問のうち、複方ヨード・グリセリン、塩化亜鉛およびオキシドールは殺菌剤として使用されていますし1)、微生物汚染を受けたとの事例もありません。また、グリセリンは水分含有量が少ない(水分活性値が小さい)ので、微生物は増殖しにくいです2)。したがって、これらの4種の処置薬では微生物汚染は生じにくいと推定されます。
一方、ボスミンR外用液0.1%+キシロカインR 注ポリアンプ2%の混合液では、ボスミンR外用液のほうに保存剤が含有されているものの、キシロカインR注ポリアンプは保存剤非含有です。このため、この混合液では、ボスミンR外用液に含まれている保存剤(クロロブタノール)が4.3倍に希釈され*、保存効果がやや低下しています。また、ボスミンR外用液とキシロカインR注とを混合すると7日後には配合変化(着色とボスミンRの力価低下(残存率77.3%))が生じる可能性があります。したがって、この混合液の1週間程度の継ぎ足し使用は望ましくありません。毎日の交換が望ましいです。
*一般論ですが、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびクロロブタノールなどの保存剤含有の製品であれば、4倍希釈液までは保存効果が期待できます。一方、保存剤としてベンザルコニウム塩化物を含有する製品であれば、2倍希釈液でも保存効果が期待できない場合があります3)。
処置薬小瓶の消毒・滅菌について
ご質問の処置薬はいずれも外用ですから、処置薬小瓶の滅菌は必ずしもする必要はないです。消毒のみでも良いです。熱水などで消毒後に十分に乾燥させてください。ただし、もしこの処置薬小瓶がノズル部分の付いているタイプのものであれば、ノズル部分の乾燥が行いにくいので、できれば高圧蒸気滅菌が望ましいです。
- 引用文献
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- Inaba K, Minami M, Yamaguchi M, et al: Effects of the ophthalmic additive mannitol on antimicrobial activity and corneal toxicity of various preservatives. Chem Pharm Bull. 68: 1069-1073, 2020.
- Leisner L, Rodel W: "Inhabition and Inactivation of Vegetative Microbes," Inhibition of micro-organisms in food by water activity. Academic Press, London, 1976, pp. 219-237.
- Oie S, Makieda D, Ishida S, et al: Microbial contamination of nebulization solution and its measures. Biol Pharm Bull. 29: 503-507, 2006.