アルコール擦式手指消毒剤の継ぎ足し使用は差し支えありません。なぜなら、アルコール擦式手指消毒剤は80vol%ほどのエタノールを含有しているので、微生物汚染を受けにくいからです1-4)。
ただし、1年間などの長期間にわたってアルコール擦式手指消毒剤の同一容器への継ぎ足し使用を行うと、Bacillus cereusなどの芽胞汚染を受けてきたり、その容器内壁の上部(液面より上の部分)にカビ(真菌)が増殖してくることなどがあります。前者ではアルコールが無効な芽胞がごみなどの混入とともに蓄積してくるためで、後者ではアルコール擦式手指消毒剤中の保湿剤などが容器の内壁にたまって、そこにカビが生えてくるためです。したがって、継ぎ足す容器の洗浄・乾燥は6カ月に1回程度は行うのが良いでしょう。
なお、アルコール擦式手指消毒剤の芽胞汚染を防止するために、米国ではアルコール擦式手指消毒剤へ少量のオキシドール(過酸化水素;終濃度として0.1%程度)を添加している製品があります。
- 引用文献
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- 山下 勝,深谷伊和男:アルコールの微生物増殖抑制に関する研究.愛知県食品工業試験所年報.12: 105-109,1971.
- Melzark R, Mount BM, Gordon JM: The Brompton mixtureversus morphine solution given orally: effects on pain. CMA J. 120: 435-438, 1999.
- 尾家重治,高浜清子,弘長恭三ほか:Brompton mixtureの微生物汚染対策.病院薬学.14: 343?348, 1988.
- 尾家重治,敷地恭子:酒造メーカーが発売している高濃度エタノール製品の微生物学的検討.環境感染.36: 72-74, 2021.
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2021年03月