側管からの薬剤投与では、薬剤をそのまま(原液)使用する、溶液に溶解または希釈し使用する等があります。いずれにしても、準備(調製)から投与までの間、注射剤の微生物汚染のリスク管理が重要です。注射剤の微生物汚染は、重大な影響をおよぼしかねない「血流感染」のリスク要因です。
看護師が病棟等の処置台で行う注射剤準備の環境等を鑑みますと、微生物汚染のリスクを念頭におく必要があります。その状況から、準備後からの経過時間により、安全に使用できる時間等について根拠を持って言及することは困難です。よって、準備してから投与までの時間は、各薬剤のインタビューフォーム(添付文書を補完する情報資材)に記載があるように「調製後は速やかに使用する」ことが原則となります。
本邦には、無菌的な環境下での注射剤調製の手順1)はありますが、看護師が病棟等の処置台で行う、つまり非無菌的な環境下での注射剤調製に関するガイドラインはありません。 よって薬剤準備においては、①注射薬を扱う調製台等の環境整備、②調製者の手指衛生の徹底、③準備時の清潔操作の遵守、④準備後の注射薬の保管(清潔なトレイ、置き場所)等について、施設ごとにマニュアルを作成し遵守することが重要です。
薬効に関して、溶解した場合等の薬剤の安定性は、「医薬品インタビューフォーム」で確認することができます。各薬剤によって異なるため、個々の薬剤に関して確認しましょう。
看護業務の繁忙さ等から、注射剤を早めに準備(調製)している状況は、臨床場面で散見されます。プレフィルドタイプ(シリンジに充填済み)の薬剤の導入や、薬剤部が主導し調整から投与終了までの時間の目安を提示している施設もあります。また、適正な注射準備時間が確保できるよう、他の業務の時間調整を図るなど、より安全に注射薬が扱えるよう取り組みましょう。
- 引用文献
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- 社団法人日本病院薬剤師会監,注射剤・抗がん薬無菌調製ガイドライン,薬事日報社,東京,2008.
医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)