洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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手術室では常時プラスチック手袋を着用していますが、コスト削減を考慮し頻回に交換できていません。5つのタイミングで手指消毒をすべきですが、プラスチック手袋着用の上からでは全く手指消毒は効果がないでしょうか?(K.H.)

手袋の上から手指消毒薬の擦り込みを行っても、手袋表面の微生物を完全に除去することはできない可能性があります1)。また、プラスチック手袋は、塩化ビニール樹脂で作られ、伸縮性や耐久性が他の手袋に対して劣り、長時間のバリア効果は期待できません。

手袋の規格は、日本では日本工業規格(Japanese Industrial Standard : JIS)があります。JIS規格では、手袋の寸法やピンホールなどの品質・性能などについて、検査水準や合格水準を定めています2)。合格品質基準は許容できる不良品率を表していますが、ピンホール試験では、1.5~2.5という数値が示されていますので、使用している製品にはピンホールがある可能性があると認識しておく必要があります。そして、使用を続けることは、ピンホールの発生率が高くなることや耐久性の低下につながります3)
また、長時間の着用は、手袋内で湿潤な環境を作り、皮膚表面で微生物の増殖を招きます。細菌がピンホールを通過することも報告されており4)、医療者の手に繁殖した細菌が手袋を通過して周囲を汚染させるリスクがあると言えます。

CDCでは、手指衛生のためのガイドラインの中で、医療従事者は、自分自身が患者からの感染伝播を受けるリスクを減らすため、自分自身の菌が患者に伝播するのを防ぐため、患者から患者へと伝播する可能性のある菌による一時汚染を減少するために手袋着用を奨励しています5)。隔離予防策のためのガイドラインでは、血液あるいは体液、粘膜、損傷のある皮膚、その他感染の可能性のある物質との直接接触が予想されるときに、手袋の装着を推奨しています6)。前述したように、長時間着用によるリスクを考慮し、必要な時に、必要な種類の手袋を着用し、その前後には手指衛生を行うよう検討されてはどうでしょうか。

引用文献
  1. Bradly ND, et al. Removal of nosocomial pathogens from the contaminated glove -Implications for glove reuse and handwashing-. Annals of Internal Medicine. 394-398, 1988.
  2. 日本グローブ工業会サイト https://www.nihon-glove.com/medicalTreatment.html
  3. Adams D, et al. A clinical evaluation of glove washing and re-use in dental practice. J Hosp Infect. 20:153-162, 1992.
  4. 手術用手袋のバリア性破綻後における微生物通過特性について. 高田 達彦他. 医科器械学. 78(10), 801-803, 2008
  5. CDC:Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings
    https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf
  6. CDC:Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings .(2007) 
    https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/isolation/index.html/Isolation2007.pdf

岡﨑 悦子(横浜市立市民病院 感染管理室 副室長)
2021年09月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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