洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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アルコールにアレルギーがある職員に対して、擦式アルコール消毒ができない場合の感染予防対策はどのような方法をとったらよいのでしょうか?(S.I.)

アルコール擦式消毒薬がアレルギーのために使用できない人は、化学物質過敏症といわれ、生体がごく僅かな化学物質に反応してしまう状況です。一種の免疫反応で手荒れとは異なる理由で、局所の皮膚が赤くはれ上がったり、全身的に気分不良となったり、呼吸困難を引き起こす場合もあります。そのような場合にはアルコールを避ける以外に方法はありません。

アルコールアレルギーの場合の手指消毒には、アルコール擦式消毒薬の代替えとしていくつかの方法があります。

  1. 流水と石けん:最も基本的な方法で、ハンドソープと流水により20秒間以上丁寧に行い、ペーパータオルにて水分をふき取ります。
  2. クロルヘキシジングルコン酸塩:手指用の洗浄剤を配合したスクラブ剤がおすすめです。手術時の手指消毒にも使用されている4%クロルヘキシジンスクラブ剤の場合には、そのままの濃度で使用できます。皮膚に残留して持続的な殺菌効果も期待できる消毒薬です。ウイルスには殺菌力は弱いとされていますが、丁寧に使用することで十分対応可能です。
  3. 第四級アンモニウム塩:逆性石けんまたは陽イオン界面活性剤とも言われ、ベンザルコニウム塩化物やベンゼトニウム塩化物があります。ウイルスに対して殺菌力は弱いとされています。市販のアルコールフリー手指消毒薬として発売されています。
  4. ポビドンヨード:洗浄剤を配合したポビドンヨードスクラブ剤が手指消毒に使用されます。抗菌スペクトルが広範囲で多くの微生物に殺菌効果を示します。アルコール製剤に比較して速効性に欠けますが、ウイルス汚染にも対応可能です(殺菌効果発現までに約2分間必要)。
  5. 次亜塩素酸水(酸性水):有効塩素濃度(10~60ppm)が薄いため、わずかの有機物により不活性化されるため手指消毒には推奨できません。次亜塩素酸を含みますので手荒れを生じやすく注意が必要です。
  6. 手袋を着用してアルコール擦式消毒:アルコールを吸入しやすいためアレルギー反応に注意が必要です。

衛生的手指衛生を行う上で、擦式アルコール製剤の使用と流水による4%クロルヘキシジンスクラブ剤使用の手洗いとを比較した場合に、両者間に細菌学的な有意差はありません。速効性において後者が多少劣るものの臨床的に見て差はありません。

なお、小児を中心とした施設においては、基本的な流水と石けんを使用した手洗い法を習得させることが大切ではないかと考えます。


大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2021年10月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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