ポビドンヨードによる術野消毒の前にアルコールガーゼにて清拭することは特に問題ではありません。しかし湿潤不足のために速乾性擦式手指消毒用アルコールを追加して術野皮膚に噴霧(散布)することは推奨されません。手指消毒用アルコール製品にはエモリエント剤(保湿剤)などが配合されていますので術野の皮膚消毒には用いるべきではありません。術野消毒の適用が記載されている消毒薬を使用して下さい。
ポビドンヨードを使用する場合の留意点は以下のごとくです。
- 有機物により不活性化しやすいため、あらかじめ皮膚の汗や垢を取り除くための清拭は必要
- 術野皮膚にポビドンヨードを塗布後は消毒効果発現までに約3分間の時間を要す
- 特有の茶褐色を呈していることが大切で、ふき取りにより持続殺菌効果は消失する
- 乾燥させることは必須条件ではない。消毒効果発現のために乾燥する程度の時間が必要である事を意味する(3分間以上)
- ポビドンヨードが体側部などに貯留して湿潤していると皮膚炎(薬傷)を呈するため、液体貯留部位の拭き取りは必要
- 電気的な絶縁性があり、対極板と皮膚との間にポビドンヨードが入らないように留意する
大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2021年11月