洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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患者の私物リネンは汚染物を取り除いてビニール袋に入れ、家庭で80℃熱水または次亜塩素酸ナトリウムによる浸漬消毒をするよう説明しているが、家庭での処理法として2回洗濯するだけでは危険か。また、感染性がある可能性のあるリネンを院外に出すことの問題点を教えてほしい。(Y.T.)

患者からの汚染物質を取り除いたリネンは汚染(感染性)リネンです。病室や病棟内で埃を巻き上げるような分別は避けて下さい。そのまま非透過性バッグに収容します。水溶性ランドリーバッグを使用できれば望ましいです。血液汚染物などがバッグから漏れないように留意して下さい。感染性リネンを患者のご家族に渡して洗濯する場合には、80℃熱水または次亜塩素酸ナトリウム(250ppm以上の水溶液中に、30℃で5分間以上浸す)による浸漬消毒後に洗濯するように依頼して下さい。大量の水で洗濯(たとえば 2サイクル洗濯)すれば感染性は消失するといわれていますが、加熱式の洗濯物乾燥機で加熱処理が可能であれば、一般細菌やウイルスへの対応は可能と言えます。通知で規定されている消毒方法を(*1)に示します。

感染症法に基づく1~4類感染症および新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の病原体に汚染されたリネンは医療機関内において消毒を行って感染性を取り除いておく必要があります。特に1~3類感染症、指定感染症、新感染症の場合にはディスポーザブルリネンとして使用後は焼却廃棄処理することが望ましいと考えます。

平成20年8月29日付け医政経発第0829003号厚生労働省医政局経済課長通知「病院、診療所等の業務委託について」の一部改正において(通知)第八:患者等の寝具類の洗濯の業務について(令第四条の七第七号関係)3.感染の危険のある寝具類の取扱い(2)により、 感染の危険のある寝具類については、その洗濯を外部委託することができるものであっても、やむを得ない場合を除き、これに係る消毒は病院内の施設で行うこととなっています。(*2)を参照してください。

「例外的に未消毒の寝具類の洗濯を外部委託する場合には、感染の危険のある旨を表示(〇〇感染症)した上で、 密閉した容器に収めて持ち出すなど、他へ感染するおそれのないように取り扱うこと」と定められています。5類感染症等の患者に使用された寝具類で「やむを得ず」未消毒で出されたもの、感染症患者以外で使用された寝具類で血液、体液、排泄物等に汚染されたもの、疥癬等の外注に依頼された汚染寝具類が該当します。

家庭へ持ち帰って洗濯することが困難な状況においては、寝具のリース式契約をする方法も行われています。

汚染された寝具類の洗濯を業者に委託する場合は、業者は「病院寝具等の受託洗濯施設に関する衛生基準」にしたがって、これらの寝具を消毒する必要があります。中に入っている寝具の種類、汚染の種類 (例:MRSA感染症、ノロウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症、血液汚染など)を明示しておかなくてはなりません。予め外部委託事業所との話し合いにより、契約内容を検討して下さい。


*1 規定されている汚染リネンの消毒方法

  1. 蒸気による消毒:100℃湿熱、10分間以上
  2. 熱湯による消毒:80℃、10分間以上
  3. 塩素剤による消毒:遊離塩素250ppm以上、5分間浸漬
  4. 界面活性剤による消毒:殺菌効果のある水溶液に30℃・30分間浸漬
  5. クロルヘキシジンによる消毒:30℃、30分間浸漬
  6. ホルムアルデヒドガスによる消毒:(滅菌の条件であり一般的でない)
  7. エチレンオキシドガスによる消毒:(滅菌の条件であり一般的でない)
  8. オゾンガスによる消毒:6,000ppm・min(医政経発第0330002号の通知内容を厳守)

*2 「病院、診療所等の業務委託について」 第八 抜粋.平成5年 指第14号 厚生省健康政策局指導課長通知(最終改正:平.30.10.30医政地発1030第1号)


大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2021年11月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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