洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

訪問看護で、吐物処理用として次亜塩素酸ナトリウム0.1%製剤にスプレーノズルを付けて車にて保管しています。光に当たらないようにはしています。使用期限はどのくらいにしたらよろしいでしょうか?(H.Y.)

使用期限は3か月ぐらいとしたらよいでしょう。

次亜塩素酸ナトリウムの0.1%製品(ヤクラックス消毒液0.1%,次亜塩0.1%液「ヨシダ」)の使用期限は、常温(1~30℃)保管で製造後2~3年間です。一方、ご質問では次亜塩素酸ナトリウムの0.1%製品自体にスプレーノズルを付けて車にて保管とのことですから、容器の遮光性の問題は小さいのですが、保管温度に問題があります。次亜塩素酸ナトリウムは直射日光のみならず高温で分解が促進されるからです。したがって、車内温度が30℃以上になることもよくある車での保管は、通常の保管法と比べて保管条件は悪くなっているので、使用期限は3か月ぐらいまでとするのが望ましいです。ただし、車内が40℃以上などの高温になる場合には車外に持ち出しておく必要があります。

なお、スプレーノズルでの消毒薬の噴霧使用は勧められません。なぜなら、消毒薬の噴霧使用では曝露を受ける危険性が高まり、呼吸器系や眼の粘膜刺激や喘息などの原因にもなり得るからです1-4)。また、噴霧法は清拭法に比べて消毒効果が劣るからです5-7)。マウスノロウイルスを用いた実験で、次亜塩素酸ナトリウムの噴霧での効果は清拭に比べて約100分の1に低下することが報告されています。噴霧では、消毒対象物の全面に消毒薬が付着する訳ではありませんし、拭き取り効果も期待できません。したがって、ノロ対策では、次亜塩素酸ナトリウムを含浸させた不織布ガーゼなどでの清拭が望ましいです。

引用文献
  1. WHO: Avian Influennza, including Influennza A (H5N1), in humans: WHO interim infection control guideline for health care facilities. - update. 10 May 2007.
  2. Deschamps D, Soler P, Rosenberg N, et al. Persistent asthma after inhalation of a mixture of sodium hypochlorite and hydrochloric acid. Chest. 105: 1895-1896, 1994.
  3. Purohit A, Kopferschmitt-Kubler MC, Moreau C, et al. Quaternary ammonium compounds and occupational asthma. Int Arch Occuo Environ Health. 73: 423-427, 2000.
  4. Waclawski ER, McAlpine LG, Thomson NC. Occupational asthma in nurses caused by chlorhexidine and alcohol aerosols. BMJ. 298: 929-930, 1989.
  5. Bolton SL, Kotwal G, Harrison MA, et al. Sanitizer efficacy against murine norovirus, a surrogate for human norovirus, on stainless steel surfaces when using three application methods. Appl Environ Microbiol. 79: 1368-1377, 2013.
  6. Panousi MN, Williams, GJ, Girglestone S, et al. Evaluation of alcohol wipes used during aseptic manufacturing. Lett Appl Microbiol. 48: 648-651, 2009.
  7. Stevens RA, Holah JT. Effect of wiping and spray-wash temperature on bacterial retention on abraded domestic sink surfaces. J Appl Bacteriol. 75: 91-94, 1993.

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2021年12月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
ホームページに関するお問い合わせはこちら