ポータブルトイレや尿器の消毒は24時間ごとなどに行うのが望ましいです。
大規模病院などでのベッドパンウォッシャー(フラッシャーディスインフェクタ;図1)の普及に伴い、ポータブルトイレのバケツや尿器は使用のつどの消毒が行われるようになってきています1,2)。しかし、有料老人ホームではこの装置は未だ普及していませんので、使用のつどの消毒は行いにくいです。したがって、ポータブルトイレのバケツや尿器はそれぞれ個人専用として、24時間ごとなどの消毒で対応してください。
回答者は以前、水洗いのみで再使用していた尿器の微生物汚染調査を行ったことがありますが、24時間以上にわたって使用した場合では、目視では分りにくいものの高濃度微生物汚染を受けていました。したがって、定期的な消毒が望ましいです。ポータブルトイレのバケツや尿器には0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの30分間以上の浸漬、ポータブルトイレの便座には消毒用エタノールでの清拭で対応してください3,4)。この際に、浸漬容器への0.1%次亜塩素酸ナトリウムの入れ替えは必ずしも毎日行う必要はありません(図2)。7日間ごとの入れ替えでも差し支えありません5)。目にみえるような汚れ(有機物)が混入しない限り、0.1%(1,000ppm)といった高濃度の次亜塩素酸ナトリウムでは、経時的な濃度低下は小さいからです。浸漬容器にはフタをして、直射日光が届かない場所で用いてください。
- 引用文献
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- Nystrom B. New technology for sterilization and disinfection. Am J Med, 91 (suppl 3B): 264S-266S, 1991.
- Ebner W, et al. Can household dishwashers be used to disinfect medical equipment? J Hosp Infect. 45: 155-159, 2000.
- 尾家重治, ほか. Clostridium difficileの芽胞に対する次亜塩素酸ナトリウムおよびジクロルイソシアヌール酸ナトリウムの消毒効果. 環境感染. 27: 119-122, 2012.
- Sattar SA. Microbicides and the environmental control of nosocomial viral infections. J Hosp Infect. 56: S64-S69, 2004.
- 林 幹也, ほか. 次亜塩素酸ナトリウムを用いた尿器の消毒法の検討. 日病薬誌. 48: 865-868, 2012.
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2022年01月