スポルディング(Spaulding)氏の分類によると、粘膜に接触する人工呼吸器回路はセミクリティカル器材に属します(表)。したがって、その回路内のネブライザーユニットもセミクリティカル器材です。一方、セミクリティカル器材に対しては、中水準または高水準消毒が必須で、滅菌処理は必ずしも必要ではありません。ウォッシャーディスインフェクタなどによる熱消毒や、消毒薬による消毒でも対応可能です。第1選択は熱で、第2選択が消毒薬です。
なお、消毒薬を用いるのであれば、洗浄後に0.01%(100ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬などで行います。次亜塩素酸ナトリウムは汚れの存在下で効力が極端に低下する特性を示しますが、汚れが存在しなければ(十分な洗浄後の器材であれば)強力な消毒効果が期待できます。
しかし、0.1%(1,000ppm)濃度以上の次亜塩素酸ナトリウムや高水準消毒薬(グルタラール、フタラール、過酢酸)でのネブライザーユニットの消毒は望ましくありません。なぜなら、0.1%以上の次亜塩素酸ナトリウムへの浸漬では材質劣化が生じやすくなるからです。また、高水準消毒薬への浸漬では、取扱い中での本薬への曝露毒性や、器材へ吸着した本薬の残留毒性などの問題があるからです。
分類 | 医療器材 |
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クリティカル器材 | 静脈カテーテル 注射針 シリンジ 自己導尿カテーテル* 気管吸引カテーテル* |
セミクリティカル器材 | 人工呼吸器回路 口腔内吸引カテーテル 喉頭鏡 体温計 損傷皮膚用のベースン |
ノンクリティカル器材 | 聴診器 松葉杖、車椅子、歩行器 オーバーテーブル、床頭台 ベッド柵 リネン 吸引装置 便器(ベッドパン)、尿器 |
*個人使用では消毒での再使用が可能
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2022年05月