プリオン病疑いのハイリスク手技に用いた器材を他の器材と混同して展開もしくはコンテナなどに保管した場合には、同一梱包したその他の器材もプリオン汚染があるものとして対応して下さい。
プリオン病のハイリスク手術や処置に使用する器材は、可能な限り単回使用器材を用いることが強く推奨されています。使用後に廃棄できる古い器械を使用して、手術終了後に焼却廃棄するのもよい方法です。
ハイリスク手技はすべてプリオン感染の可能性があるものとして対応し、再使用する器械を再生処理するときには、プリオンの不活性化が確立された方法を用いることが推奨されています。
プリオンは、医療機関において通常行われている消毒・滅菌法に対して極めて強い抵抗性を示します。ハイリスク手技に使用した鋼製小物に付着したプリオンの不活性化に役立つ実用的な方法は以下のごとくです。(耐熱性かつ耐アルカリ性で洗浄液に全体を浸漬できる器械の場合)
- 十分な洗浄を行うことが大切であり、ウォッシャーディスインフェクターを用いて高温アルカリ洗浄(90~93℃)を行うと十分な洗浄が行なえるのみではなく、プリオンの化学的性質を変化させて感染力を低下させることができます(destabilization effects)。高温アルカリ洗浄を2回繰り返すことも推奨されています。
- 滅菌工程は真空脱気プレバキューム高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ 134℃、8~10分間)を用います。設定時間を18分間に延長することも推奨されています。
プリオン対策として手術器械の取り扱いの基本は、手術中に器械を滅菌蒸留水で頻回に清拭する、器械に付着した汚染物を消毒薬等で凝固させない、手術終了後は速やかに洗浄するなどに留意することが必要です。
アルカリ洗浄剤による素材の変化については、アルミニウム製、真鍮製、チタン製などは腐食、変色、侵食が起きやすいと言われています。ガラス製品、各種樹脂類(プラスチック)、各種ゴム類なども変色しうる素材です。
- 参考文献
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- プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班・日本神経学会. プリオン病感染予防ガイドライン2020. 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター発行 2020年7月
大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2022年06月