吸引カテーテル(チューブ)の熱水消毒では、前もってのカテーテル内のタンパク質(粘液など)の除去が必要です。熱によるタンパク凝固を防ぐためです。しかし、吸引カテーテル内の機械的洗浄は行いにくいです。したがって、使用後の吸引カテーテルには3%オキシドール液のフラッシュや、その後の石けん液への浸漬などを行う必要があります1,2)。すなわち、吸引カテーテルの熱水消毒は手間暇がかかるので勧められません。吸引カテーテルの再使用は、以下のような方法が勧められます。
気管内吸引カテーテル
次の①~③の手順で行います。
①使用後のカテーテル外側をアルコール綿で清拭する。その後、粘液除去のために滅菌水を吸引する。
②引き続き、8%エタノール添加の0.1%ベンザルコニウム塩化物(ヤクゾールE液0.1など)を吸引して、カテーテル内腔に本液を満たした後に、本液へ浸漬しておく3-5)。
③次の使用前には、消毒薬を洗い流す目的で、滅菌水を吸引する。
ここで、滅菌水は24時間までに交換してください。また、8%エタノール添加の0.1%ベンザルコニウム塩化物は24時間~5日間などの交換とします(吸引回数による)。なお、8%エタノールは微生物汚染の防止やベンザルコニウム塩化物の効力増強に、また、0.1%ベンザルコニウム塩化物は殺菌ならびに汚れの除去に有効です。
口腔内・鼻腔内吸引カテーテル
使用後の吸引カテーテル外側をアルコール綿で清拭します。その後、粘液除去のため通水してカテーテルをその水に浸しておく(または通水したカテーテルを空袋に保管するなど)。この際の水は水道水でも差し支えありませんが、24時間までの使用にとどめます。同一患者であれば、使用後の気管内吸引カテーテルを口腔内・鼻腔内吸引カテーテルに使用することも可能です。
なお、吸引カテーテルの再使用は、気管内および口腔・鼻腔内いずれであっても24時間までとするのが望ましいです。24時間を超えて再使用するのであれば、前述の熱水消毒や滅菌が必要になると推定されます。
- 引用文献
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