「ビニール袋の中に尿を捨てるので、蓄尿瓶に直接尿は付着しません」とありますので、蓄尿瓶の内側にビニール袋を広げて尿回収されている状況を想定して、コメントさせていただきます。
ビニール袋を使うことで、使わない場合より蓄尿瓶の汚染は少なくなります。しかし、尿回収時の目に見えない飛散、作業者の手技による汚染を考慮すると、使用後の蓄尿瓶は、洗浄、消毒されることをお勧めします。物品を消毒するときには、消毒前に洗浄して有機物を取り除くことが重要で、そのあとに消毒すると効果的です。ご質問のように消毒にクロスを使用する場合も、前段で洗浄が必要と考えます。
次に消毒ですが、クロスを用いて行う清拭消毒も消毒方法のひとつとしてありますが、この場合、クロスで清拭された部分だけが消毒され、それ以外は消毒されません。拭き残しのないように物品の表面を清拭することが必須となります。消毒薬の種類として、80%エタノールは消毒水準が中水準消毒にあたりますので問題ありません。ただし、アルコールは揮発性がありますので、前述した拭き残しに留意してください。十分量塗り付けないと、すぐに乾燥してしまい消毒不良になってしまいます。作り置きされたクロスの使用をお考えでしたら、含浸された消毒薬の濃度が保たれているのか、その点は注意が必要です。
一般的には、尿廃棄に使用した蓄尿瓶の消毒は、作業者の曝露防止や業務の効率性から、ベッドパンウォッシャーを使用した洗浄・熱消毒を推奨します。消毒する物品の形状にもよりますが、凹凸のあるものを拭き残しのないように清拭することの難しさやアルコールの揮発性を考慮すると、次に、次亜塩素酸ナトリウム溶液での浸漬消毒をお勧めします。浸漬消毒の場合は、物品が完全に消毒薬につかるよう浸漬させる、薬液の濃度、蓋の使用などに注意すると良いです。
最後に、尿回収と廃棄時に注意したい感染対策は、標準予防策の考え方から尿は感染性があるものとして扱うこと、交差感染の防止です。尿回収前後の手指衛生や手袋交換も徹底し、二次感染の防止に努めると良いと思います。
- 引用文献
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- 大久保憲・尾家重治・金光敬二 編集. 〔2020年版〕消毒と滅菌のガイドライン. へるす出版, 2020.
- WHO Guidelines on hand hygiene in health care
http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241597906_eng.pdf