新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)対応施設で、グリーンゾーンでの不適切なガウン使用に対する指導について、と解釈し説明いたします。
先ず、COVID-19におけるゾーニングについてです。ゾーニングとは、病原微生物に汚染されている区域で個人防護具を着用する汚染区域(レッドゾーン)と、汚染されていない区域で個人防護具を着用しない清潔区域(グリーンゾーン)にエリアを区分けすることです。イエローゾーンとして、個人防護具を脱衣するエリアを設ける場合もあります。以上より、グリーンゾーンでCOVID-19対策としてガウンを使用することはありません。
グリーンゾーンの職員がガウンを使用する目的は何でしょうか?
一般的に医療現場においてガウンを使用する目的は、①血液や体液で汚染される可能性がある場合に医療者の衣類や体幹部の皮膚を守る、②医療者が無菌的処置をする際、医療者の衣類に付着している埃や病原体に、患者や器材が曝露されるのを防ぐ1)、この2点です。個人防護具の適正使用の観点での指導が望まれます。
グリーンゾーンでのウイルスの巻き上げを問題視しているのは"床"と考えます。床には多くの微生物が存在していますが、感染経路を遮断することで感染に直接関わることはありません。また靴の履き替え等により手指が汚染するリスクを考慮し、履き替えやシューズカバーは推奨されていません2)。床は消毒薬を使用し消毒したとしても、一定時間経つと元の状態に戻ってしまうため行いません。一方、室内の床面上のダストは、歩行やドアの開閉、掃除など、人の動きによって巻き上げが起きます3)。ダストのサイズや性状、床面の材質や環境条件によって、巻き上げ率は大きく違いますが、カビや細菌類などは0.0001%-0.1%という報告1)があります。
日常的に汚れと埃を取り除く清掃により、巻き上げのリスクの低減を図ります。
以上より、ガウンをきちんと着用せずひらひらさせながら動いたり、しゃがむ動作でスソ部分が床に触れてしまったり等により、ガウンが微生物汚染するリスクはあります。よって、不要なガウンの使用はせず、適正な使用目的に基づき、適切に使用できるよう指導しましょう。
- 引用文献
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- 一般社団法人職業感染制御研究会;個人用防護具(PPE)解説編https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-gown.html アクセス日:2023年2月4日
- 一般社団法人日本環境感染学会;医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第5版(2023年1月17日)
- Qian J et al.: Walking-induced particle resuspension in indoor environments. Atmospheric environment, 2014;89:464-481.
医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)