手術室の空調管理(清浄度、換気、気流、温湿度等)は、手術部位感染防止を目的として重要です。質問者の方の施設では24時間空調稼働がなされています。その他の空調管理は、「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)」1)を参照の上チェックください。適切な空調管理がなされている手術室においては、"器械準備前の手術室環境全体の清掃"は見直し可能です。
手術室の手術台・無影灯などの環境表面が、手術部位感染の直接の原因となることは稀ですが、人の手が触れることから環境表面を清潔に管理することは重要です。「手術医療の実践ガイドライン改訂第3版」2)に基づき、手術室の清掃区分別にポイント及び方法等について表1にまとめました。一連の環境整備について見直す参考にしてください。
清掃区分/ポイント | 方法等 |
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始業時清掃 毎朝、手術開始前に点検を行い、必要に応じて整備を行う |
・以下の箇所に関して、清掃状況(汚れの有無等)の確認を行い、汚れた部分を発見した場合は除菌ペーパーなどで清拭する 手術台、その周辺床面/機器やモニター周辺/無影灯 ・手術照明の管球切れの有無 ・空調機能(温度・湿度、ダンパー) |
手術間清掃 手術台を中心に短時間で効率よく行う |
・清掃の前に、廃棄物を速やかに収集、搬出、吸引ビンの処理と交換を行う ・手術台はエタノールを含浸させた不織布等で清拭する ・床面の除塵作業は、①手術台周辺の器材を壁側に寄せる、②高性能モップで手術台から90cm~120cm のエリアを清拭する、③乾燥後に器材を元の位置に戻す ・床は除菌洗浄剤を使用した高性能モップで清拭し乾燥させる ・血液汚染箇所は汚染部分のみを安全な方法で拭き取り、部分的に次亜塩素酸ナトリウム等で消毒する。清拭にはきれいなモップヘッドを使用する |
終業時清掃 手術台周辺を中心に使用した機器も含めて行う |
・床面の除塵と清拭、手術台、機器類、無影燈、コード類の清拭を手術間清掃・清拭よりも丁寧に行う ・その後に床面の仕上げ拭きと必要に応じて部分的に消毒(0.2~0.5%両性界面活性剤)する ・最後に清拭済みの機器類を定位置に戻す |
週末・月末清掃 計画的に、日常清掃では行えないような場所の清掃を行う |
・壁付近の物品を中心に清掃する(壁面、保温庫・冷凍冷蔵庫の内外、シャウカステン、ホワイトボード、自動ドア面、各種棚類などや棚) ・画像モニターは定期的に清拭する ・パソコンのキーボードやマウスの汚染除去 ・床はモップと除菌洗剤で清拭清掃する |
定期的特殊清掃 手術室全体の高度な環境清掃を行う |
・年に2 回程度、手術室全体の高度な環境清掃を行う ・環境整備の知識を十分に備えた専門業者による実施が望ましい |
文献2)引用・参考として作表
- 引用文献
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- 日本医療福祉設備協会編:病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022,2022. p1-158.
- 日本手術医学会:手術医療の実践ガイドライン(第3版).手術医学 2019;40(Suppl.): 1-200.
小野 和代(東京医科歯科大学 統合診療機構 機構長補佐・
医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)
医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)
2023年12月
付記:ただし、手術室の空調を24時間運転しておく必要はあるでしょうか。
空調機の性能(フィルターの種類、換気回数など)や手術室の使用状況にもよると思いますが、空調の運転を開始して30分もすれば十分室内の空気の清浄化は得られます。
空調の立ち上がり時間について確認されると良いと思います。
HP監修者からのコメント