洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

眼科の術野消毒ですが、眼内はヨウ素(ヨード)+ポリビニルアルコールの洗眼殺菌剤、顔はポビドンヨードを使用しています。ヨード禁の場合、何を選択し、どのように消毒するのが良いでしょうか?(K.K.)

ヨード禁での眼内(結膜嚢)の消毒には、0.02%クロルヘキシジン、0.01~0.05%ベンザルコニウム塩化物および0.02%ベンゼトニウム塩化物などがあげられます1-5)。いずれの消毒薬でも、消毒薬の眼毒性を最小限にとどめるため、適用後2分以内での滅菌生理食塩水などによるすすぎが必要になります。

また、ヨード禁での顔(眼瞼皮膚)の消毒にも、0.02%クロルヘキシジン、0.01~0.05%ベンザルコニウム塩化物および0.02%ベンゼトニウム塩化物などがあげられます。顔の消毒では、眼への消毒薬の飛入の危険性があるので、このような低濃度液の使用となります。閉瞼を指示して、消毒薬含浸綿球で皮膚を軽く擦過しながら消毒します6)

なお、クロルヘキシジンやベンザルコニウム塩化物などの生体使用では、濃度間違いの防止のため、医療現場での希釈は差し控えてください。希釈・滅菌済みの製品を使用します。0.02%クロルヘキシジンではステリクロンW液0.02%、0.02%ヘキザック水W、0.02w/v%マスキン水、0.02%グルコジンW水などが発売されています。また、0.02%ベンザルコニウム塩化物ではオスバン消毒液0.025%、ザルコニン液0.02%、0.025%ヂアミトール水、プリビーシー液0.02%、逆性石ケン液「ヨシダ」0.02%、ベンザルコニウム塩化物消毒液0.025%、ザルコニン0.025%綿球(綿棒)などが発売されています。一方、0.02%ベンゼトニウム塩化物ではベゼトン液0.02%が発売されています。

引用文献
  1. Heeg. P. Antisepsis of mucous membranes-present status and future trends. Z Gesamte Hyg. 36: 83-86, 1990.
  2. Salvatico S, Feuillolay C, Mas Y, et al. Bactericidal activity of 3 cutaneous/mucosal antiseptic solutions in the presence of interfering substances: Improvement of the NF EN 13727 European Standard? Med Mal Infect. 45: 89-94, 2015.
  3. Wejde G, Samolov B, Seregard S, et al. Risk factors for endophthalmitis following cataract surgery: a retrospective case-control study. J Hosp Infect. 61: 251-256, 2005.
  4. Montan PG, Setterquist H, Marcusson E, et al. Preoperative gentamicin eye drops and chlorhexidine solution in cataract surgery. Experimental and clinical results. Eur J Ophthalmol. 10: 286-292, 2000.
  5. Starr MB, Lally JM. Antimicrobial prophylaxis for ophthalmic surgery. Surv Ophthalmol. 39: 485-501, 1995.
  6. 原祐子,大橋裕一.眼や耳への混入.実践に活かす 手術野消毒薬の知識.p.87-p.89, 2016年3月30日初版.

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2024年01月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
ホームページに関するお問い合わせはこちら