アルコール浸漬でのアルコールの交換頻度は、微生物汚染や揮発・希釈による濃度低下などに左右されます。
まず、アルコールの微生物汚染について、回答者の経験事例を紹介します。図(左)は、輸液バッグ(製品)をアルコール浸漬していた事例です。1か月間にわたってくり返し使用していましたが、1か月間使用後のアルコール液は1mLあたり11生菌数のBacillus spp.(バチルス属)の芽胞汚染を受けていました(使用前のアルコール液は100mLあたりゼロ生菌数)。なお、本事例は不経済で、かえって輸液バッグが汚染を受ける可能性があるなど不適切な事例です。
図(右)は、緊急消毒の目的で眼科用器材をアルコール浸漬していた事例です。7日間使用後のアルコール液は計3回の検査でいずれも1mLあたりゼロ生菌数でした。
この他、令和2年3月23日付で「酒造メーカー発売の高濃度エタノール製品は消毒用エタノールの代替品として手指消毒に使用可能」との厚労省通達が出たので、高濃度エタノールの微生物汚染について調べたところ、9品目中7品目(77.8%)から100mLあたり5~44生菌数のバチルス属などの芽胞が検出されました(対照の消毒用エタノール計3製品はいずれも100mLあたりゼロ生菌数)1)。以上から、アルコールは使用法によっては芽胞汚染を受ける可能性がありますし、またすでに芽胞汚染を受けている製品もあります。
一方、アルコールは開放状態では急速に揮発するものの、蓋をしておけば急速な揮発は防げます2)。また、希釈によるアルコールの濃度低下は、浸漬する器材の乾燥状態などにより異なってきます。
ご質問者様の現場の詳しい状況が不明なため、断定的なことは言えませんが、蓋付き容器で使用のアルコールの交換頻度は7日間ごとなどとされてはいかがでしょうか。
図.アルコール液への浸漬例
左;輸液バッグ,右;眼科用器材
引用文献
- 尾家重治,敷地恭子.酒造メーカーが発売している高濃度エタノール製品の微生物学的検討.環境感染誌.36: 72-74, 2021.
- 弥山秀芳,高田秀穂,三箇山宏樹,他.消毒用アルコール綿におけるアルコール濃度の経時的変化.日病薬誌.37: 917-920, 2001.