洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

詰所内シンク清掃(手洗い、注射処置室、洗浄室)はスタッフ管理にしていますが、標準化されていないため部署独自の方法となっています。標準化策定に辺り、消毒洗浄剤は何を使うか、回数や方法もご指導下さい。(M.A.)

シンク内の汚染菌は、シンク内へ定着するために、また自身を守るためにバイオフィルムを形成します(図)。このため、汚染菌に対する消毒剤の効果は限定的です1,2)。したがって、シンク内の清潔保持は機械的洗浄で対応してください。バイオフィルムの形成や汚れの付着などを防ぐため、1日1回程度の洗剤とスポンジなどを用いた洗浄が望ましいです。

なお、シンク内を熱湯で消毒する方法は、ある程度は有効です。しかし、シンク内のバイオフィルム形成細菌は数日も経過すると盛り返してきます。したがって、毎日など頻回の熱湯消毒が必要になり、熱傷の危険性から勧められません。

また、シンク内の水のはね返りで汚染菌が周辺に飛び散る危険性があります。したがって、シンク近辺への注射処置台の配置は避けてください。注射剤のゴム栓の表面などに飛び散った汚染菌が針の刺入とともに薬液中へ混入すると、増殖する可能性があります。とくに、血液製剤(アルブミンなど)、脂肪乳剤(イントラリポス®)、プロポフォール(ディプリバン®など)およびダブルバッグ型の末梢栄養輸液(ビーフリード®、パレセーフ®、パレプラス®)などではすみやかに増殖できます3)


図.バイオフィルムを形成した緑膿菌の走査電子顕微鏡写真(×30,600)
(回答者 原図)


引用文献

  1. Anderson RL, Holland BW, Carr JK, et al. Effect of disinfectants on pseudomonads colonized on the interior surface of PVC pipes. Am J Public Health. 80: 17-21, 1990.
  2. Stickler D, Dolman J, Rolfe S, et al. Activity of antiseptics against Escherichia coli growing as biofilms on silicone surfaces. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 8: 974-978, 1989.
  3. Oie S, Kamiya A, Yamasaki H, et al. Rapid detection of microbial contamination in intravenous fluids by ATP-based monitoring system. Jpn J Infect Dis. 73: 363-365, 2020.

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2024年07月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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