洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

経管ボトルとチューブですが、単回使用が基本と思われますが再利用する場合洗浄と消毒が必要と思いますが、洗浄は洗浄剤は使わず水のみでもよろしいでしょうか?今は酵素系洗浄剤と次亜塩素酸Naに浸漬しています。(H.Y.)

経管栄養セットの洗浄は水のみでは不十分です。現状どおり、洗浄剤を用いた洗浄で対応されてください。

次亜塩素酸ナトリウムは細菌芽胞にも有効な消毒薬で、過酢酸(アセサイド®)などの高水準消毒薬と同様に広範囲抗菌スペクトルを示します。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは中水準消毒薬に分類されています。この理由は、次亜塩素酸ナトリウムは有機物(汚れ)が存在すると急速に効力がなくなるからです(イラスト)1,2)。次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は汚れと反応すると食塩(NaCl)になります。

回答者の経験例ですが、台風による病院の浸水時に、栄養治療部の管理栄養士の方から「ほ乳びんのオートクレーブ(高圧蒸気)滅菌ができなくなったので、代わりに0.01%(100ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの1時間浸漬を行った。大丈夫か調べてほしい」との問合せをいただきました。調べたところ、菌だらけでした。汚染原因は、消毒前の洗浄を水のみで行っていたためでした。ほ乳びんや経管ボトルは汚れが付きやすい用具ですから、次亜塩素酸ナトリウム消毒の前には洗浄剤を用いた洗浄が必須です3,4)

なお、投与チューブは洗浄がしにくいので、できれば単回使用が望ましいです。


イラスト.次亜塩素酸ナトリウムは汚れに弱い(尾家 原図)


引用文献

  1. Oie S, Obayashi A, Yamasaki H, et al. Disinfection methods for spores of Bacillus atrophaeus, B. anthracis, Clostridium tetani, C. botulinum and C. difficile. Biol Pharm Bull. 34: 1325-1329, 2011.
  2. Coates D. Comparison of sodium hypochlorite and sodium dichloroisocyanurate disinfectants: neutralization by serum. J Hosp Infect. 11: 60-67, 1988.
  3. Oie S, Kamiya A, Hironaga K, et al. Microbial contamination of enteral feeding solution and its prevention. Am J Infect Control. 21: 34-38, 1993.
  4. Oie S, Kamiya A. Comparison of microbial contamination of enteral feeding solution between repeated use of administration sets after washing with water and after washing followed by disinfection. J Hosp Infect. 48: 304-307, 2001.

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2024年11月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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