使用していないシンクの清掃は、シンク内の汚染や汚染菌によるバイオフィルム形成を考慮すると、1日1回程度、機械的にスポンジと洗剤を用いた洗浄が望ましいです。シンクの清掃は、誰が、どのタイミングで実施されることになるでしょうか。多数のシンクを流れ作業的に行う場合は、使用する物品にも注意したいものです。洗浄が不十分な場合には、物品を介して汚染を広げていくことになりますので、個別の物品をお勧めします。
今回はシンクの清掃方法についてのご質問でしたが、シンクの清掃を考えるとき、シンク関連の感染対策についてのポイントを押さえておくとよいです。使用していないシンクが設置されている場所は、どのような環境でしょうか。患者環境にあるのか、あるいは、医療スタッフの作業環境なのか、物品の保管場所なのか等により、さまざまな感染経路が考えられます。「しばらく使用していない」点で、水の問題や蛇口の汚染1)、清掃時の汚染の問題もポイントとなるでしょう。ご施設の給水配管はどのようになっているでしょうか。シンクとともに水道水も暫く使用しない状況ですと、配管の末端部分では塩素濃度も低下します。レジオネラ対策において、塩素濃度を保つために定期的なフラッシングは必要です。実施されていないようでしたら、併せて検討されるとよいです。
シンクに関連した感染事例では、排水口やシンク下の排水管の汚染が問題になったりします2,3)。シンクを使用することにより汚染菌が飛び散り、接触感染や吸い込みによる飛沫感染につながるものです。このことは、定期的に水を流すことや清掃がリスク発生につながるのではないかと考えさせられます。現在使用していないシンクが今後使用する予定があるのかを検討し、使用する予定がないのであれば撤去することも一つの選択肢でしょう。
参考文献
- 中村造. 医療施設におけるWater Hygiene管理について. 医療関連感染 2023; 16:1-3
- De Geyter, D., Blommaert, L., Verbraeken, N. et al. The sink as a potential source of transmission of carbapenemase-producing. Antimicrob Resist Infect Control. 2017; 6:24
- Nakamura I, Yamaguchi T, Miura Y, et al. Transmission of extended-spectrum β-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae associated with sinks in a surgical hospital ward, confirmed by single nucleotide polymorphism analysis. J Hosp Infect. 2021; 118:1-6.