1.ノロウイルス汚染の畳の消毒
(1)イ草素材
イ草素材の畳には、次亜塩素酸ナトリウムは適しません。脱色作用を示すからです。一方、ノロウイルスに対するアルコールの効果は弱いです1-3)。このため、イ草素材の畳には、抗ノロウイルス効果を高めたアルコール製剤(エタノール62vol%)であるサラサイド除菌クロスの使用が代替として考えられます4)。
この他、濡れタオルを敷いて、その上にスチームアイロンをかける方法も報告されています5,6)。ただし、この方法ではイ草の下の稲わらが水分を含んでしまう可能性があります。
(2)プラスチック素材
プラスチック素材(塩化ビニールなど)の畳に対しては、次亜塩素酸ナトリウムおよび高濃度アルコール(消毒用エタノールなど)いずれも材質劣化作用を示す可能性があります。したがって、比較的低濃度のアルコール含有製剤(エタノール62vol%)で、抗ノロウイルス効果を高めたサラサイド除菌クロスの使用が代替として考えられます。
2.ノロウイルス汚染の絨毯の消毒
もっとも望ましい消毒法は熱水洗濯です。80℃・10分間の熱水洗濯を行えば、安全・確実にノロウイルスの消毒が行えます(図)7-9)。
この他、濡れタオルを敷いて、その上にスチームアイロンをかける方法も報告されています。ただし、絨毯はスチームアイロンで焦げやすいので、あまり実用的な方法とはいえません。また、スチーム洗浄が有効ではとの意見もありますが、スチーム吹き出し口の温度は60℃前後ですから(回答者が測定)、あまり有効とはいえません。
引用文献
- Lin Q, et al. Sanitizing agents for virus inactivation and disinfection. View (Beijing). 1: e16, 2020.
- Girard M, et al. Attachment of noroviruses to stainless steel and their inactivation, using household disinfectants. J Food Prot. 73: 400-404, 2010.
- Zonta W, et al. Comparative virucidal efficacy of seven disinfectants against murine norovirus and feline calicivirus, surrogates of human norovirus. Food Environ Virol. 8: 1-12, 2016.
- 隈下祐一,ほか.ノロウイルス代替のネコカリシウイルスおよび各種微生物に有効なエタノール製剤の開発.防菌防黴.35: 725-732, 2007.
- 貞升健志,ほか.模擬吐物による飛散距離の推定と加熱処理に関する評価.食品衛生研究.5711: 41-47, 2007.
- 小林マキ子,ほか.ノロウイルス対策としての蒸気加熱処理.医療関連感染.4: 5-8, 2011.
- Ayliffe GAJ, et al. Control of hospital infection: a practical handbook. 4th ed. London: Arnold, 2000.
- Ebner W, et al. Can household dishwashers be used to disinfect medical equipment? J Hosp Infect. 45: 155-159, 2000.
- Cannon JL, et al. Surrogates for the study of norovirus stability and inactivation in the environment: a comparison of murine norovirus and feline calicivirus. J Food Prot. 69: 2761-2765, 2006.
尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2025年01月