洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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施設で電解次亜水の生成装置を使用しています。約200ppmに生成されたものを半透明のポリタンクに入れて配布され4週間以内に使用することになっています。保管方法や使用期限など注意点を教えてください。(R.K.)

水道水に塩化ナトリウムを加えた溶液に隔膜を介して電気分解した時に陽極側に生成される溶液(陽極水)を電解酸性水とよび、電解次亜水も同様の溶液です。様々な呼び方があります。この生成過程で生ずる次亜塩素酸(HOCL)は殺菌効果を示すことから、医療の分野でも除菌剤として環境整備や食品衛生、生体除菌、内視鏡の処理などで広く使用されています。しかし局方などにおいて“消毒薬”としては認識されていません。許認可された消毒薬ではありませんので生体に使用する場合には、それなりの留意が必要です。

医療現場で容易に生成できますが、その溶液成分は一定ではなく次亜塩素酸濃度も不安定なものが多いです。現場にて生成された溶液を医療機器等に対して消毒効果を期待して使用することは、成分の不安定さを考慮して常に一定の次亜塩素酸濃度を維持できるような対応が求められます。そのためには日常的に次亜塩素酸濃度を測定して記録し、決められた濃度が維持できるように対応しなければなりません。

お示しの電解次亜水の次亜塩素酸濃度200ppmは、電解次亜水としては比較的高濃度の部類に属しますが、塩素系消毒薬の一般的な使用濃度から考えますと、かなり濃度は薄いと言えます。低濃度であれば有機物による不活性化は容易に起きてしまいます。塩素系消毒薬の使用濃度は、哺乳瓶100ppm、食器200ppm、環境(芽胞、ウイルス、細菌)1,000ppmが一般的です。

電解次亜水の特長としてその保存期間および劣化に及ぼす影響は、

1)    紫外線と高温の影響を受けやすい:保存は遮光容器に入れて冷暗所保存して下さい。
2)    空気に触れると劣化しやすい:密閉できる容器で保存して開封する回数を減らして下さい。容器内部に空間をなるべく残さないように充満させて保存して下さい。
3)    濃度が薄いと劣化が進む:希釈せずに生成直後の濃度が高い状態を維持して下さい。
4)    有機物で容易に不活性化する:0.1%程度の微量の有機物の混入にて殺菌効果はなくなりますので、消化器内視鏡などの器具の除菌には事前洗浄が大切です。

以上が劣化防止に重要な点です。適切に保存できれば電解次亜水は数週間から1ヵ月程度は保存可能です。開放容器での保存は32時間が限度です。消毒薬として使用する場合には生成直後の新鮮なものを使用して下さい。さらに、生成装置周辺や保存容器内では高濃度の塩素ガスが発生しやすく金属腐食作用もあります。安全対策にもご留意ください。


大久保 憲(医療法人幸寿会平岩病院 院長・東京医療保健大学 名誉教授)
2025年02月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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